「反同性愛法」可決から5カ月、ウガンダで止まらないLGBTの逮捕・失業・国外逃亡

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「反同性愛法」が2013年12月に可決、14年3月10日から施行されているウガンダで、LGBT(性的少数者=レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)に対する人権侵害が深刻化している。アムネスティ・インターナショナルによると、警察から嫌がらせを受けたり、恣意的に逮捕されるほか、同法を盾に取られ雇用主から解雇されたり、大家から立ち退きを迫られ、ホームレスになったり、国外へ逃亡するケースが増えている。また、少なくともトランスジェンダー女性1人が殺された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)とアムネスティ・インターナショナルの人権2団体が首都カンパラなどで4月までに調査したところ、13年12月以来、合意に基づく同性間の性行為をしたという理由で17人以上が逮捕されていることがわかった。この中には「LGBTであるらしい」という疑いだけで捕まった人も含まれる。ウガンダの人権団体によると、同様の理由で07~11年に逮捕されたのは23人だったことから、ウガンダではこの5カ月でLGBTを取り巻く状況が急激に悪化していることが鮮明になっている。

調査対象となった全員が隣人からの脅しや監視を逃れるため、引っ越したと答えた。1月以降に海外に亡命したLGBTは100人以上とみられる。新聞やテレビでLGBTであることを暴露されたケースも少なくない。

ウガンダのLGBTはまた、医療サービスを受ける機会も減っている。医療従事者が患者の“秘密”を漏らすため、身の危険にさらされるリスクがあるからだ。トランスジェンダーの男性が発熱で医者を訪れた際、医師から「ゲイは治療しない。警察を呼んであなたを訴えてもいい」と告げられたという。このトランスジェンダーの男性は結局、5万ウガンダシリング(約2100円)を口止め料として払い、その場を去った。

さらにひどいのは、LGBTを攻撃しても罪に問われないという現実だ。2月には、トランスジェンダーのセックスワーカー(女性)が、バーで出会った男にさんざん殴られ、殺されるという事件が起きた。

反同性愛法は、合意に基づく成人同士の性的行為に終身刑を科すことができる。「同性愛行為を目的にした建物、部屋、場所等を所有する者」を有罪とする条項もある。このためLGBTの借家人を強制退去させることが正当化できるようになっている。

カンパラを拠点に活動するグループ「セクシュアル・マイノリティズ・ウガンダ(SMUG)」は「ウガンダは総力を挙げて、LGBTを摘発、暴露し、蔑み、抑圧している」と事態の深刻さを訴える。(堤環作)