「みんな神様の子ども」、トンガでみられる養子の習慣

???????????????????????????????親子キャンプの様子

「俺の息子だ」。職場の同僚、ロペア(仮名)にそう紹介されたパフル(仮名)は、どうみても私と同世代だ。年齢を聞いてみると、21歳だという。息子にしては、あまりに大きすぎる。いつものジョークかと思い、周りの同僚にさりげなく聞いてみると、「正真正銘の親子だよ」との答え。ということは、パフルは、ロペアが12歳のときに生まれた子ということになる。

「養子なんだよ」。ロペアに直接聞いてみると、いつものくったくのない笑顔で答えてくれた。ロペアに限らず、普段トンガ人と話をしていると、養子がいるという話を耳にすることがよくある。実際、ロペアが住んでいる村では、30%以上の家庭が養子を迎えているという。

たしかロペアは、自分には5人の子どもがいると、以前言っていた。「パフルだけが養子なの」と聞いてみると、5人の子ども全員が養子だと言われ、驚いた。そして、さらに6人目の養子をとる準備をしていると言った。

ロペアに誘われて、父親と息子を対象にしたキリスト教会主催のキャンプに参加した。遮るものがなにもない海辺にテントを貼り、みんなでバーベキューをする。零れ落ちそうな星空の下、静かで大きな波の音を聞きながら、父子で親睦を深める。「最近学校はどうだ?」。ロペアも、一緒に砂浜に腰掛ける息子たちに話しかける。

「何でロペアは養子をとるの」。子どもたちが寝静まった後、思い切って聞いてみた。「俺の息子たちは、もともと困難を持っていた子どもばかりなんだ。障害を持っていたり、母親がシングルマザーだったり。そういう子どもを持つ親と相談して、代わりに育てている」。そういえば、パフルも生まれつき片方の足に障害があり、足を引きずりながら歩いていた。

トンガでの養子縁組みのケースは様々だ。学生が望まない妊娠をした場合や、母親が離婚や死別でシングルマザーになってしまった場合などに養子に出されることが多い。それを、経済的に余裕を持つ人が、自分の子どもとして育てることが珍しくないようだ。だが、ロペア自身、それほど生活に余裕があるわけではない。

「養子を取ることは、負担にならないの」。そう尋ねると、「俺たちはみんな神様の子ども。家族だからね。家族のために自分のできることをしているだけだから、負担なんかじゃないよ」。とくに気負うわけでもなく、いつもの笑顔で答えてくれた。

トンガなどの南太平洋の国々では、国民のおよそ3割が基礎生活において貧困状況にあると推定されているが、飢餓の状態に陥る人はほとんどいない。その背景には、「家族」を中心とする強いつながりがあると言われている。また、国民のほとんどがキリスト教徒であるトンガでは、豊かなものが貧しいものに奉仕をする習慣が定着している。「育てられるものが育てる」「助けられるものが助ける」という意識が、トンガの社会を支えているのだ。(細川高頌)