イラン映画の巨匠・キアロスタミ監督の追悼上映会、渋谷のユーロスペースで19日まで

初日から大勢の映画ファンがキアロスタミ監督の作品を鑑賞した

2016年7月に亡くなったイラン映画を代表するアッバス・キアロスタミ監督を追悼する上映会が8月17日から都内で始まった。8月19日まで。10月にも映画以外の幅広い活躍も紹介する第2弾の上映会が開催される。

■「偉業を語り継ぐ機会に」

追悼上映「ありがとう!キアロスタミ」は東京・渋谷にある映画館「ユーロスペース」が企画した。今回の上映会は8月17日~19日の3日間。以下の4作品を上映する。

1)「友だちのうちはどこ?」(1987年。日本で初めて上映された作品)

2)「ライク・サムワン・イン・ラブ」(2012年。遺作。日本で撮影、日本人俳優起用)

3)「クローズアップ」(1990年。実際の事件の当事者らが出演するセミドキュメンタリー)

4)「ドキュメント:キアロスタミの世界」

ユーロスペースの担当者は「われわれはずっとキアロスタミ監督の作品を上映してきた。改めてまとまった形で上映し、監督の偉業や才能を語り継ぐ機会にしていきたい」と開催理由を話す。

10月19日~27日には第2弾の追悼上映会「キアロスタミ全仕事」(仮題)も開催する。キアロスタミ監督は生前、映画監督以外にも写真家や詩人としても活躍しており、こうした多面的な業績も紹介する。

■革命後もイランに残る

キアロスタミ監督は16年7月4日、がんの治療で入院していたパリで逝去した。翌日イランでは全国の映画館で黙とうが捧げられ、遺体がテヘランに到着した際には、約1万人が集まったという。

監督は1940年、テヘラン生まれ。71年に映画監督としてデビュー。日本人映画監督・小津安二郎氏のファンであると公言していた。

79年のイラン革命後、当局の検閲が強くなって多くの文化人が国外に出た後も、国内に残って作品を撮り続けた。

作品の特徴の1つは、子どもから大人まで多くの一般人が出演している点だ。自然な演技ができるよう撮影や演出に入念な時間をかけていたと多くの映画関係者が振り返る。独特の演出からは人間味がにじみ出て、社会情勢や人間の本質について考えさせられる。

今回も上映された「友だちのうちはどこ?」の他、「そして人生はつづく」(1992年)「オリーブの林をぬけて」(1994年)の3作品は「ジグザグ道3部作」と言われ、世界的な評価を確立した。

また「桜桃の味」という作品で1997年にカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドール賞も受賞した。監督の遺体は「桜桃の味」のロケ地に埋葬されたという。

日本にもたびたび訪れた親日家で、2013年には旭日小綬章も受賞した。

■まずは映画からイランへ

キアロスタミ監督だけでなく、世界的に評価の高いイラン映画は多い。俳優の故・高倉健氏も生前、イラン映画を観た方がいいとメディアの取材に答えている。

16年1月にイランへの経済制裁は解除されたが、多くの日本人にとってまだなじみが薄い国の1つだ。映画好きのイラン人。まずは映画から、イランの人々の生活に思いをはせてはいかがだろうか。

今回の上映会は19日まで。10月に第2弾が開催される(©ユーロスペース)

今回の上映会は19日まで。10月に第2弾が開催される(©ユーロスペース)

会場にはキアロスタミ監督の写真や作品のポスターも並べられた

会場にはキアロスタミ監督の写真や作品のポスターも並べられた