経済損失は879億円?! さかなクンが語る プラスチックは海と海洋生物を殺す

東京・表参道の国連大学で世界海洋デー(6月8日)に開かれたシンポジウム「日本から考えるSDGs 14: 海の豊かさを守ろう」で話す東京海洋大学名誉博士・准教授のさかなクン(UNU / D.Powell )東京・表参道の国連大学で世界海洋デー(6月8日)に開かれたシンポジウム「日本から考えるSDGs 14: 海の豊かさを守ろう」で話す東京海洋大学名誉博士・准教授のさかなクン(UNU / D.Powell )

世界海洋デーの6月8日に、「日本から考えるSDGs(持続可能な開発目標) 14: 海の豊かさを守ろう」と題するシンポジウムが国連大学で開かれた。東京海洋大学名誉博士・准教授のさかなクンと国連大学のイーヴォン・ユー研究員が登壇し、海の生物にとって「プラスチック」が大きな脅威になっていることを報告した。リサイクル率わずか1割といわれるプラスチックごみの量は2050年には魚の量を超えると予測される。さかなクンらは、プラスチックの使用量を減らすために、「やめよう、プラスチック汚染」を合言葉に日常生活でできることを意識して実行することが重要だと訴えた。

さかなクンがとくに注目するのは、沖縄県のサンゴ礁。プラスチック汚染の被害を著しく受けているからだ。プラスチックごみが付着してサンゴが傷付いたり、直径5ミリメートル以下の「マイクロプラスチック」を餌(プランクトン)と間違えてサンゴが食べ、病気なったりすることも報告されている。

サンゴだけではなく、魚もプラスチックごみの被害を受ける。胃の中からビニール袋の破片やペットボトルのふたが見つかった深海魚のミズウオ、プラスチックごみが首に引っかかって大けがを負ったサメなど、衝撃的な事件が世界各地で確認されている。

シンポジウムのなかでイーヴォン・ユー研究員は、海に捨てられた網漁具が魚を殺す「幽霊漁業」について言及。「プラスチックが自然界で分解されるには飲料ボトルで450年、釣り糸で600年かかる」と警鐘を鳴らした。国連の調査によると、年間800万トンのプラスチックごみが海に流れ込み、海洋生態系に与える経済的損失は毎年80億ドル(約879億円)にのぼるという。

プラスチックの海洋汚染に終止符を打つために、国連は「#やめようプラスチック汚染(#Beat Plastic Pollution)」というスローガンのもと、エコバッグやマイボトルの使用を推奨するなど、啓発活動を始めた。英国のメイ首相が使い捨てプラスチックストローの販売禁止を目指すと表明したほか、インド政府も使い捨てプラスチック製品を2022年までに禁じる方針を示すなど、世界中でプラスチックフリーへの意識が高まっている。

ところが時代の流れに乗りきれていないのが日本。イーヴォン・ユー研究員は「日本の対応はまだ鈍い」と指摘する。さかなクンも「海に何が沈んでいるのかを知り、必要のないプラスチックの利用をなくすことが不可欠でギョざいます」と話す。

シンポジウムの最後に国連大学の沖大幹上級副学長が登壇。「日本国内のごみの量は20年前にピークに達した。だが官民が協力してごみ対策(ごみ袋の有料化、分別の徹底など)に取り組んだ結果、目標値以下まで削減できた。プラスチックごみも同じように削減できるはず」と、根気強く取り組むことを呼びかけた。