悩める名古屋の元OL「私の人生はコロンビア山奥のコーヒー農園にあった!」

0213赤間さん、コーヒーPフレドニアの大自然を背景に愛犬とともに笑顔を見せる松尾彩香さん(コロンビア・アンティオキア州)

年収2万円でも楽しい

夫婦のコーヒー農園には現在、広大な山の斜面に約5000本のコーヒーの木がある。多くは2019年にカットバック(伸びた木を30センチメートルくらいまで切って短くする)したばかりの木で、本格的に収穫できるのは4、5年先だという。

「生活費は、私の貯金と、日本に帰ったときの1カ月間のアルバイトでまかなう。コーヒーからの収入は1年で2万円程度にしかならない。生活は正直、苦しい」

そんな中、彩香さんが今熱心に取り組むのは、コーヒーを日陰で栽培する方法「シェイドグロウン(Shade-Grown)」と日本の消費者への直接販売だ。

彩香さんによると、シェイドグロウンは環境に優しく、甘みも向上するという。コーヒーの成長が遅くなるため周囲の農園はあまりやりたがらないが、彩香さんはあえて挑戦する。「少量でも高品質のコーヒーを作りたい」と語る。

日本の消費者への直接販売にも力を入れる。流通過程の中抜きをなくして利益を上げるためだ。2019年は、日本向けに自社ブランド「Café Piedra Verde(カフェ・ピエドラ・ベルデ)」を立ち上げた。2020年か2021年にはオンラインショップを開設する計画だ。

彩香さんは日本向けにSNSを使って、フレドニアのコーヒー農園の労働者や商品の情報発信にも積極的だ。日本人がいると噂になり、電話がかかってくるほど。2019年の夏には、ツイッターで製品を紹介し、日本に帰国した際に2000円で20袋のコーヒーを3日で完売した。

無限の可能性がある

彩香さんはまた、コーヒー豆を売ること以外に、コーヒー農園を起点にしたビジネスのアイデアを次々と描く。コーヒーワイン、コーヒー菓子、コーヒー農園ツアー、エコツーリズム。「コーヒーには無限の可能性がある。アイデアを考えるのが楽しい」と生き生きした表情を見せる。

ただコロンビアでの生活は楽ではない。コロンビアに来た当初は食事が合わず、胃炎で3日間食事が取れなかったことも。農園では水道が整備されていないため、タンクに生水を貯め煮沸して飲み水にする。タンクの掃除をしないと蛇口から砂が出てくる。「はじめは慣れずに苦労した」と言う。

それでも、フレドニアの大自然への思いとコーヒー農園を営むことへの情熱は尽きない。「自然を毎日見ていると守りたいと思う」「ここは居心地がいい」「やりたいことが見つかった」。彩香さんからは次々とポジティブな言葉が出てきた。

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