スポーツで国際協力を目指す女子大生、ヤンゴンの養育施設「ドリームトレイン」でインターン

「スポーツを通じて子どもたちに何かしたい」と語る文教大学3年の及川智冬さん(ミャンマー・ヤンゴンの養育施設ドリームトレインで撮影)「スポーツを通じて子どもたちに何かしたい」と語る文教大学3年の及川智冬さん(ミャンマー・ヤンゴンの養育施設ドリームトレインで撮影)

ミャンマー・ヤンゴンにある養育施設「ドリームトレイン」(運営:日本のNGOジャパンハート)でスポーツを指導するインターン生がいる。文教大学3年の及川智冬さん(22)だ。彼女が担当するのは、サッカー、ダンス、野球など。高校時代はサッカー部で、東北大会で3位の成績を残した及川さんは、スポーツは「自発性」「自尊心」「考える力」を高める効果があると力説する。

「ちーちゃん、サッカーやりたい!」。こう興奮気味に近寄ってきたのは、ドリームトレインで生活する十代前半の女の子たち。彼女たちは学校に行く前、サッカーをやろうとうずうずしているのだ。

ドリームトレインでは、貧困などを理由に集まってきた6~21歳の子ども約130人が共同生活する。寮があるだけでなく、サッカーや野球ができるグラウンドも併設する。このグラウンドは、子どもにとって格好の遊び場だ。だが男の子がいつも占領するため、女の子たちは、ちーちゃんこと及川さんに「サッカーできるスペースを空けてもらってよ」とお願いしているのだ。

女の子がサッカーをやることを及川さんが応援するのは、好きなことに挑戦させてあげたいからだ。女の子たちはかつて、サッカーをしたいと言い出せなかったという。だが及川さんが男の子たちとサッカーする姿を見て、「私たちもやりたい!」と女の子たちは言い出すようになった。

サッカーができるスペースを得た女の子たちは喜んでプレーするようになった。「『グラウンドでサッカーをやれて楽しかった!』と女の子たちが笑顔で言ってくれたんです。それが本当に嬉しくて」と及川さんは話す。

2019年12月に及川さんは、ドリームトレイン恒例のスポーツ大会のなかでサッカーの試合を企画した。プレーヤーは低学年の子どもたち。及川さんはその中で最年長の14歳の少年にキャプテンを任せた。

チームは前半戦、負けていた。ハーフタイムでキャプテンの少年はチームメイトを集め、どうしたら挽回できるのかを話し合い、後半戦は別のフォーメーションで戦った。及川さんは「子どもたちにはスポーツを通じて、自発性を身に付けてほしいです」と願う。

及川さんの持論は、サッカーだけでなく、さまざまなスポーツに取り組むことは子どもたちの自尊心を高めるのに一役買うということ。「サッカーが苦手でも、野球やダンスは得意かもしれない。さまざまなスポーツを体験することで、自分が活躍できる分野が見つかる可能性が高まる」と力説する。

スポーツを通して、諦めずにいかにゴールにつなげるかといった「考える力」も培ってほしいと言う。「ドリームトレインの子どもたちは、サッカーの試合でピンチになるとすぐにグラウンドの外へボールを出したり、遠くに飛ばしたり逃げてしまうんです。ボールをキープして攻め上がる選択肢もあるはずなのに」

及川さんがサッカーに出会ったのは高校生のときだ。中学時代にテレビでJリーグや日本代表の試合を見て、サッカーに興味をもった。福島県の桜の聖母学院高校に入学。フォワードとして活躍し、東北大会3位へとチームを導いた。

大学受験を突破した及川さんは、女子サッカー部に入らなかった。代わって興味をもったのは海外でのボランティアだ。及川さんは3年前、ミャンマーを初めて訪れた。インレー湖の観光の拠点となる町、シャン州ニャウンシュエから車で3時間行った所にある村で、子どもたちに日本語を教えたり、薪として使う木を切ったり、コンクリート製の花壇を作って花を植えたりした。

村の子どもたちは恥ずかしがり屋だった。「でもサッカーを一緒にやったら、仲良くなれました」。及川さんが村を去るとき、子どもたちの寂しそうな顔が及川さんの脳裏に焼き付いた。「この村の子どもたちとずっとかかわっていたいな、子どもたちのためにスポーツを通じて何かしたいなと思うようになりました」

3月10日にインターンが終わった及川さん。「日本に帰ったら、夢に向けてスポーツマネジメントを学べたら良いなぁと思います」と言う。いつか、ニャウンシュエか、ボランティアで訪れた村で、さまざまスポーツに挑戦できるスポーツスクールを運営することが夢だ。

ドリームトレインの敷地内にあるグラウンド。子どもたちは、平日は朝7時半から8時半まで、土日は朝7時半から9時半までサッカーや野球をして遊ぶ

ドリームトレインの敷地内にあるグラウンド。子どもたちは、平日は朝7時半から8時半まで、土日は朝7時半から9時半までサッカーや野球をして遊ぶ