国王を批判するタイの若者たち、タブーを破り目指すは「王室改革」

普段のバンコクのようす。写真は、日本の無償資金援助で1992年に完成したラマ4世通りにかかる「ラマ4世橋」(日タイ橋)普段のバンコクのようす。写真は、日本の無償資金援助で1992年に完成したラマ4世通りにかかる「ラマ4世橋」(日タイ橋)

不敬罪で99 人が逮捕

石栗氏によると、不敬罪で捕まる人が特に2020年11月以降増えたという。人権派弁護士団体のデータ(6月10日時点)では、不敬罪の容疑で99人が捕まった。うち起訴されたのは16人。若者が開催するデモで声を上げたリーダーもこのなかに含まれる。 

石栗氏は「アノン氏の演説以降、若者たちは、民主化だけでなく、王室への批判と改革を要求するようになった」と話す。

王室改革を要求するために、若者らが王室と政府に突きつけたのが「王室改革10項目」だ。不敬罪の廃止、王室予算の削減、政治への不介入、王室を批判して殺された犠牲者の真相究明などが含まれる。 

「王室と政府はいまのところ、王室改革に応じる姿勢を見せていない。プラユット首相も政権トップにいすわり続けるだろう。ただ若者たちは王室を倒したいわけではない。彼らの希望は、君主の威厳を損なわず、国民の目線で王室のあり方を見直してほしい、ということだ」(石栗氏)

新型コロナウイルスの感染拡大で、デモの参加者は少ない状況が続く。コロナ以前は数百万人に達したが、5月以降は数百人から千人程度にとどまる。 

石栗氏は「ワクチンを接種して外に出る機会がようやくでき、少しずつ人数は増えつつある。大規模なデモはこれからも起きるだろう」と予測する。

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