アフリカ産の干し芋が日本初上陸へ! タンザニアで起業した協力隊OB、7年越しの夢実る

栽培マニュアルをスマホで農民に見せ、植栽間隔について説明するマトボルワの社員。2019年に撮影したもの(写真提供:長谷川竜生氏)栽培マニュアルをスマホで農民に見せ、植栽間隔について説明するマトボルワの社員。2019年に撮影したもの(写真提供:長谷川竜生氏)

サツマイモの生産量は世界4位

日本から遠く離れたタンザニアに長谷川氏がマトボルワを設立したのには3つの理由がある。サツマイモの生産量、干し芋作りに適した環境、それに人件費の安さだ。

世界食糧機関(FAO)によれば、タンザニアのサツマイモの生産量は2019年、中国、マラウイ、ナイジェリアに次ぐ世界4位。生産量は日本の3倍にのぼる。タンザニアは世界屈指のサツマイモ大国なのだ。

干し芋づくりに適した環境も重要だ。中国以外のアジアでは、インドネシアの生産量が世界6位だが「干し芋を生産するには乾燥に適した場所が必要。その点、(工場のある)ドドマは(標高1120メートルで)涼しい」と長谷川氏は説明する。

人件費も安い。マトボルワが従業員に払う日給は1万1000タンザニアシリング(約500円)。それでも「ドドマにあるほかの工場の平均的な賃金の1.5倍程度」(長谷川氏)。干し芋は生産工程の蒸煮(じょうしゃ)の後、柔らかくなる。そこからはほぼ手作業で、皮を剥き、スライスし、最後に食品乾燥機に並べて乾燥させる。そのため人手が必要となり、人件費がかさむのだ。

このほか、長谷川氏が青年海外協力隊の元タンザニア隊員だったことも大きい。「任期中に農家の役に立てなくて悔しかった。何をしたらいいのかを考え続け、自分の中で、農家の経営を支援することが必要だという結論になった」と話す。

ただ事業を立ち上げてからは苦労の連続だった。

マトボルワを2014年に創業してから、タンザニア産干し芋の日本への輸出に向けて、干し芋の試作を重ねてきた。運転資金を得るために同社は、サツマイモを使った芋けんぴや干し芋作りで培った熟成・乾燥技術を生かしてドライフルーツを作り、タンザニア国内で売ってきた。

創業から4年経った2018年、ドライフルーツなどの事業が軌道に乗り、単年度黒字を初めて達成した。これまでは借金で回していただけに、借り入れがかさむのにはひとまずストップをかけることができた。

だが長谷川氏はいまも無報酬。なぜなら利益は、食品乾燥機や冷蔵庫の購入資金の蓄えに回しているからだ。自らの生活費は、日本企業のアフリカ進出を手伝うコンサルタント業務で稼いでいるという。

マトボルワは2014年、茨城県にある干し芋の老舗・照沼勝一商店などの出資を受けて設立。年間の売り上げは約2億タンザニアシリング(約1000万円)。従業員は18人。商品ラインアップは、干し芋、芋けんぴ、ドライフルーツ(マンゴー、パイナップル、バナナ)、落花生と胡麻を使ったナッツバー(日本でいう「おこし」)の4種類だ。

クラウドファンディングのリターンとして送る予定の干し芋(写真提供:長谷川竜生氏)

クラウドファンディングのリターンとして送る予定の干し芋(写真提供:長谷川竜生氏)

タマユタカの干し芋の出来栄えに満足して満面の笑みを浮かべるマトボルワの工場長。2020年に撮影(写真提供:長谷川竜生氏)

タマユタカの干し芋の出来栄えに満足して満面の笑みを浮かべるマトボルワの工場長。2020年に撮影(写真提供:長谷川竜生氏)

タンザニアで収穫したタマユタカ。2020年に撮影(写真提供:長谷川竜生氏)

タンザニアで収穫したタマユタカ。2020年に撮影(写真提供:長谷川竜生氏)

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