アフリカ産の干し芋が日本初上陸へ! タンザニアで起業した協力隊OB、7年越しの夢実る

栽培マニュアルをスマホで農民に見せ、植栽間隔について説明するマトボルワの社員。2019年に撮影したもの(写真提供:長谷川竜生氏)栽培マニュアルをスマホで農民に見せ、植栽間隔について説明するマトボルワの社員。2019年に撮影したもの(写真提供:長谷川竜生氏)

甘い干し芋はタンザニアで売れない

一連の工程の中で最も難しいのが、サツマイモを干し芋へ加工することだ。工場に持ち込んだサツマイモは貯蔵庫で1〜2カ月熟成させる。ここでサツマイモの澱粉が糖に変わり(糖化)、甘くなる。

長谷川氏は「この工程をクリアするのに3年かかった。当初はカビが生えるなど失敗の連続だった。日本の老舗の干し芋会社のアドバイスを受けたり、研究を重ねたりして、ようやくうまく糖化させられるようになった」と話す。

出来上がった干し芋は今のところ、タンザニア各地の富裕層向けスーパーマーケットのみで売っている。1年に作る干し芋の量は約900袋(1袋100グラム)。売り上げは約420万タンザニアシリング(約20万円)だ。

買い取ったタマユタカでマトボルワはまた、芋けんぴも作る。年間の生産量は約6700袋(1袋35〜185グラム)。売り上げは約1350万タンザニアシリング(約64万円)だ。

タンザニアでは日本のように甘いサツマイモを食べる習慣がないため、タンザニア国内の干し芋の売り上げは良くない。芋けんぴの甘さも、日本の3分の1から4分の1程度に抑えているという。

3000万円の投資が必要

長谷川氏がいま力を入れつつあるのが、日本への輸出だ。マトボルワが作った干し芋も芋けんぴも日本ではまだ売っていないが、「マトボルワを設立した7年前から、干し芋の日本への輸出を目指していた」と長谷川氏は言う。

その理由は、日本で干し芋人気が続いているからだ。長谷川氏は「日本ではここ10年、供給が不足して、干し芋の値段は上がり続けている」と説明する。東京都卸売市場の市場統計情報によれば、日本の干し芋の卸売価格はここ10年で2倍になった。

日本で干し芋不足が続くのは、日本市場の半分を占めていた中国産の輸入量が2000年代に比べて、日本貿易統計によると1万トンから3000トンへと7割減になったためだ。2000年代半ばに多発した中国の食品偽装事件が響いているという。「仮にこの需給ギャップをすべて埋められれば、約30億円になる計算だ」と長谷川氏はそろばんを弾く。

日本へ干し芋を輸出するために、マトボルワが必要とするのが食料乾燥機などの増設だ。必要な投資額は3000万円ほど。その一部を同社は10月14日まで、クラウドファンディングで集めている。

最終目標額は920万円。内訳は、食品乾燥機の購入費として299万円、商品を保存しておく冷凍庫の購入費132万円など。9月29日時点では第一目標額の450万円を達成した。

食品乾燥機をあと2台増やれば、干し芋と、同社が干し芋生産のノウハウを生かして作るドライフルーツの年間生産量はともに5倍(干し芋は約4トンから20トンに、ドライフルーツは約2トンから10トンへ)に増える見通しだ。

長谷川氏は「日本への本格的な干し芋輸出まであと一歩のところまで来た。リターンには、マトボルワが生産する干し芋やドライフルーツもある。無添加で自然の甘みが感じられる自慢の商品をぜひ味わってほしい」と意気込む。

低温貯蔵したサツマイモの糖度を糖度計で計測する。2018年に撮影したもの(写真提供:長谷川竜生氏)

低温貯蔵したサツマイモの糖度を糖度計で計測する。2018年に撮影したもの(写真提供:長谷川竜生氏)

マトボルワの株主と従業員の集合写真。2018年に撮影(写真提供:長谷川竜生氏)

マトボルワの株主と従業員の集合写真。2018年に撮影(写真提供:長谷川竜生氏)

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