ベナンの貧しい農家の野菜を都市の富裕層に直販! 協力隊OBがバイク便

農業スタートアップのアグリミッションを創立した綿貫大地さん。野菜の買い付け先の農家を訪問しているところ農業スタートアップのアグリミッションを創立した綿貫大地さん。野菜の買い付け先の農家を訪問しているところ

JICA海外協力隊OBの綿貫大地さんが2021年3月に、西アフリカのベナンに設立した農業スタートアップ会社がある。都市部の富裕層からオンラインで野菜の注文を受け付け、採りたての新鮮な野菜をバイクで自宅前まで配達するアグリミッション(本社:ベナン・アボメカラビ)だ。綿貫さんは「貧しい地方の農家が安定した収入を確保し、自立できるようにしたい」と語る。

相場より2割高く買い取る

アグリミッションの事業は、仲買を省き、農家と消費者を直接つなげるもの。綿貫さんは「ベナンには卸業者がほぼいない。このため農家は育てた野菜を都市部に輸送するのが難しかった。アグリミッションが立ち上げた『農家直送サービス』を使ってもらうことで、地方の農家でも単価が高くなる都市部で野菜を売れるようになった」と強調する。

同社が契約するのは個人経営の農家250軒だ。事業を始めた当初は、ベナン最大の都市コトヌーから約160キロメートルのところに位置するズー県の農家が中心だった。ズー県は、綿貫さんが2017~19年の協力隊時代に配属されたところ。ニンジンやキャベツ、ジャガイモなどを育てる農家は顔見知りばかりだ。最近はそれ以外の県の農家とも契約するようになった。

農家の実態について綿貫さんは「育てた野菜は最寄りの市場では安く買いたたかれ、農業では日本円にして月5000円しか程度しか稼げない。生活が成り立たない。多くの農民は農作業の合間にバイクタクシーの運転手や学校の教師をやり、なんとかやりくりしている」と説明する。

農家の収入を少しでも上げようと、綿貫さんが思いついたのが、ズー県の農家から作物を直接買い付けることだ。ニンジン、レタスといった野菜が中心だが、最近ではパイナップルやオレンジなどのフルーツにも広げた。買い付け金額は相場より20%ほど高いという。

売り上げが倍増した農家も

アグリミッションは、日本のLINEに相当するSNSアプリの「ワッツアップ」を使って、コトヌーやアボメカラビといった都市部の富裕層から野菜の注文をで受け付けている。

注文数に応じて農家から野菜を買い付け、都市部へまとめて運ぶ。1軒の農家では負担の大きい輸送コストも、アグリミッションが農村と都市を定期的に往復するタクシー会社と契約し、定期輸送することで削減できる。

都市に到着した野菜は、新鮮なうちにデリバリーバッグに詰めてバイク便で消費者の自宅前まで配る。配達は毎日午前9時~午後6時。最近ではトゥクトゥク(後部に大きな荷台の付いた三輪自動車)を購入し、大口の顧客へ配達できるようになった。今後は住宅街への出張販売も考えている。

需要の多い都市部での野菜の販売が可能になった農家からは「売り上げが2倍になった」「自分の作った野菜が評価されて嬉しい」と喜ばれているという。

地方の農家から都市に運んだ野菜は、バイク便で消費者の自宅前まで配ける

地方の農家から都市に運んだ野菜は、バイク便で消費者の自宅前まで配ける

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