畑で腐っていたパイナップルがジュースに! 「モッタイナイ」を実践する会社がベナンにあった

本来なら腐って捨てられるはずのパイナップルをジュースに加工する飲料メーカー「トランスアグロ」生産責任者のハーマン・ドボヌーさん(ベナン・アボメカラビで撮影)本来なら腐って捨てられるはずのパイナップルをジュースに加工する飲料メーカー「トランスアグロ」生産責任者のハーマン・ドボヌーさん(ベナン・アボメカラビで撮影)

西アフリカのベナンではパイナップルジュースが大人気だ。ベナン南部のゼ市に本社を置く飲料メーカー「トランスアグロ(Trans Agro)」は、消費できずに畑で腐らせてしまうパイナップルに目をつけ、2015年からジュースの生産を始めた。商品を売り出した当初の1日あたり生産量は200本だったが、2018年は約12倍の2500本にまで急拡大。経営は軌道に乗りつつある。

トランスアグロがパイナップルジュースを作ろうと考えたきっかけは、大量のパイナップルやパパイヤ、スイカが畑で腐っているのを目にしたことだった。同社の生産責任者であるハーマン・ドボヌーさんは「せっかく育てたフルーツを腐らせるのはもったいない。保存が効くように、ジュースにしたらいいのではないかと思った」と語る。ボドヌーさんが所属する、農業訓練を女性に提供するNGOのメンバー5人で、ジュースを作る会社を立ち上げた。

設立1年目は、すべての生産プロセスは手作業だった。パイナップルの皮をむいて実をつぶすための機材を1年以内に購入するために、毎日200本のジュースを出荷することを目標にした。「パイナップルはいったん切ったら、すぐに酸化してしまう。そうなるとジュースには使えない。ムダを出さないように、皮をむいてから実をつぶしてこすまでがスピード勝負。試行錯誤の連続だったよ」とドボヌーさんは振り返る。

販売プロセスでは、顧客の獲得に苦戦した。10年ほど前からの健康志向の高まりを背景に、ベナンでは国産の100%ジュースが出回り始めた。このため競合他社が多く存在したのだ。そこで自社製品を知ってもらうために、業者向けの試飲会や、生産プロセスの見学会を開催。この戦略が功を奏し、業者から高く評価され、トランスアグロの製品が徐々に知られるようになった。

2018年9月には搾汁用、殺菌用、ジュースの冷却用、ビンへの詰め替え用の4つの機械を導入した。合計で420万セファ(CFA)フラン(約84万円)の投資だった。その結果、2015年に年間72万CFAフラン(約14万円)だった売り上げは、2018年には25倍の1800万CFAフラン(約360万円)に急増した。利益も、24万CFAフラン(約5万円)から、265万CFAフラン(約53万円)まで伸びている。従業員を雇うことも可能になり、現在17人で操業中だ。

2019年の経営目標は、生産量を今の2倍の1日5000本にまで増やすこと。また、新たにパパイヤ、スイカ、オレンジのジュースも売り出す。こうした生産拡大の目標に加えて、従業員のトレーニングも強化する計画だという。ドボヌーさんは「会社を立ち上げる前、NGOでは女性の独立を助けるために農業のトレーニングをしていた。今度はジュースの生産方法を教え、農業とは別の方法で独立の支援をしたい」と従業員の将来も見据える。