ベネズエラの反政府活動家「マドゥロは大嫌い」、コロンビアに避難してもデモは続ける

カリートでコーヒーを売るラミレスさん(コロンビア・メデジン近郊のベジョで)

コロンビア・メデジンのすぐ北にあるベジョ市でカリート(小さな可動式屋台)を使ってコーヒーを売るディクシニア・ラミレスさん(55歳)。2019年にコロンビアに隣接するベネズエラのスリア州から逃げてきた彼女は祖国を変えたいとの強い思いをもつ。

世界最大の石油国家なのに貧困

ラミレスさんがベネズエラからコロンビアにやって来た理由は、ベネズエラでの政治的弾圧と貧困から抜け出したかったからだ。

ベネズエラではおよそ10年前からハイパーインフレが続く。その契機となったのは石油価格の急落と生産量の低下だ。国家収入の8割を石油に依存していたベネズエラ政府にとって石油収入の減少は大打撃。必要な紙幣を大量に印刷した結果、2019年のインフレ率は268万%に達し、2020年の経済成長率はマイナス30%に陥った。

ちなみにベネズエラは2010年以降、サウジアラビアを抜き、世界1位の石油確認埋蔵量を誇る。ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)は、ベネズエラ政府が借金を返済するため、外交の手段として(キューバやボリビアといった反米左派政権へ援助するため)、「ミシオン」と銘打った数々の社会福祉プロジェクトを進めるため――の財源を稼ぐ役割を担ってきた。

だがラミレスさんは「ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)は民営化すべきだ」と主張する。その理由は、チャベス政権の前の“健全の状態”に戻したいからだ。

ベネズエラが貧しくなった大きな理由のひとつは、PDVSAをチャベス前大統領が2007年に完全国営化したため、外資系企業が撤退。優秀な技術者がいなくなり、新たな油田も発掘できず、また油田のメンテナンスもできなくなった結果、石油生産量が減少したからだ。1999年の1日当たり石油生産量をみると1999年は300万バレルだったが、2019年は100万バレルを切るなど3分の1以下となった。

石油産業を民営化し、ベネズエラ経済を復活させたいと2010年、地元のスリア州を基盤とする反チャベス中道左派政党「ウン・ヌエボ・ティエンポ」(スペイン語で「新しい時代」)の党員にラミレスさんはなった。その3年後の2013年に反チャベスの右派政党「プリメロ・フスティシア」(正義第一党)に入党。デモに参加したり、SNSで考えを発信するなど精力的に活動したりした。

「ウン・ヌエボ・ティエンポ」の代表を務めるのはマヌエル・ロサレス氏だ。2006年の大統領選でチャベス大統領(当時)と戦い、敗北した。その後は、スリア州の州都で、ベネズエラ第2の都市であるマラカイボで2009年まで市長を務めた後、汚職疑惑で告発されペルーに亡命。現在はベネズエラに戻り、2021年からスリア州知事となった。

2012年の大統領選ではチャベス氏、2013年はチャベス氏の死去に伴い実施された大統領選ではマドゥロ氏(副大統領から大統領に昇格していた)の対抗馬として大統領選に出馬したエンリケ・カプリレス氏が創設したのが「プリメロ・フスティシア」だ。ただカプリレス氏は、反政府勢力を排除したいマドゥロ大統領により2017年からの15年間、公職から追放された。

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