ごみを分別しないモンゴル、貧困層が生ごみ使って家庭菜園!

ウランバートルの貧困地区「ゲル地区」で堆肥と野菜づくりを住民に広めるのは、モンゴルのNGO「トルゴイド地区地域開発センター(TCDC)」。ゲルの中にある事務所で、TCDCのメンバーと話し合う京滋・モンゴル友好市民ネットワークの柳原勉代表理事(写真奥、2018年撮影)ウランバートルの貧困地区「ゲル地区」で堆肥と野菜づくりを住民に広めるのは、モンゴルのNGO「トルゴイド地区地域開発センター(TCDC)」。ゲルの中にある事務所で、TCDCのメンバーと話し合う京滋・モンゴル友好市民ネットワークの柳原勉代表理事(写真奥、2018年撮影)

「生ごみは最大の資源になる」。こう語るのは、NPO法人京滋・モンゴル友好市民ネットワークの柳原勉代表だ。同団体は2019年、モンゴルの首都ウランバートルの貧困地区で、住民が家庭の生ごみから堆肥をつくり、それを使って野菜を育てるプロジェクトを立ち上げた。野菜は自分たちで食べるほか、市場でも売る計画だ。

給食の残飯をもらう

プロジェクトの舞台となるのは、「ゲル地区」と呼ばれる貧困地区だ。ゲル地区とは、草原地帯からウランバートルに仕事を求めてやってきた元遊牧民らが暮らすところ。ゲル(モンゴルの遊牧民のテント)や簡素な家が並ぶことからこう呼ばれる。住民の数は、ウランバートルの人口150万人の半数にあたる70万人にものぼる。

ウランバートル最大のゲル地区があるのが同市北部の「ソンギノハイルハン区」。ここに本部を置く地元のNGO「トルゴイト地区地域開発センター(TCDC)」が堆肥と野菜のつくり方などを住民に教える。

TCDCがこだわるのは、ゲル地区の環境にあった堆肥づくりの方法を確立することだ。課題は2つある。

ひとつは、ゲル地区の家庭から出る生ごみは種類が少ないことだ。タマネギやニンジン、ジャガイモの皮がメイン。動物性タンパク質の肉は足りない。

主食が羊肉のモンゴルでは、生ごみとして捨てる部分は骨のみ。骨のきわに残った少しの肉でさえ、多くの家庭が飼う犬のエサになる。堆肥に混ぜられるよう、骨を砕いて粉にするのも手間がかかる。

そこで柳原氏が目をつけたのは、学校給食やレストランの残飯だ。給食は、ソンギノハイルハン区内の公立幼稚園と小中学校(モンゴルでは小中一貫教育)1校ずつから集めることが決まったという。量は1日100キログラムだ。

柳原氏は「2、3年後には子どもたちが、給食から出た生ごみで堆肥をつくり、野菜も育てる教育プログラムができたらうれしい」と話す。

生ごみを外で冷凍!

もうひとつの課題は寒さだ。冬にはマイナス40度まで冷え込むモンゴルでは、段ボール箱や木の箱の中で堆肥ができるまで、屋内に置いても2カ月ほどかかる。生ごみを間に挟みこむように箱に入れる地面の土が乾燥しているうえ、その土の温度が低いからだ。土の中の微生物が生ごみを分解しながら熱を出すものの、発酵に最適な50~60度までなかなか上がらないという。

TCDCは、少しでも早く堆肥をつくれないかと、住民の身の回りで手に入るものを取り入れて試行錯誤を繰り返した。

たとえば、日本の堆肥づくりの材料で一般的な泥炭のかわりに、草原の枯れ草を加えたり、揚げ物や炒め物の残り油や家畜のフンを土に混ぜたりといった具合だ。土の栄養剤は日本ではもみ殻を使うが、小麦の生産が盛んなモンゴルでは麦殻だ。

寒さを逆手にとった工夫もある。冬の間に出た生ごみを家の外に出して、冷凍保存しておく。5月ごろに自然と溶けた生ごみから堆肥をつくれば、野菜栽培に適した8月に間に合う。

こうした内容をTCDCは、ゲル地区の住民に配る教材にまとめる。2021年6月から取りかかる予定だ。

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