筆者(写真中央)が着ているシャツはAYA WEARのもの。デザイナーのAYAはアフリカの文化を尊重し、ファッションを通してジャマイカ人のルーツを表現している
まずは左の写真を見てほしい。写真中央に写っている筆者が着ている色あざやかな服は、青年海外協力隊員として2年間住んだジャマイカで購入した。
ジャマイカ・ポートランド州に住むジャマイカ人デザイナーAYAは、アフリカで購入した布を用いて、自らデザインしたワンピースやシャツなどを製作している。私が着ている服は、AYAが立ち上げたAYA WEAR(アヤウェア)というブランドのもの。「アフロ・ジャマイカン」な衣服は、アフリカに起源を持つジャマイカ人に好評だ。
フィリピン・セブ市にあるカルボンマーケットを歩いていたら、どこかで見たことのある柄の布が吊るされているのが目に入った。私の着ている服と色こそ違うものの、そっくりだ。アフリカで買い付けた布なのか、と思わず聞くと予想外の答えが返ってきた。
この布は「Malong(マロン)」と呼ばれる筒状の衣服だという。店主によると「サンボンガ市(フィリピン南部)で作られているイスラム教徒の伝統的な衣装で、アフリカとは関係がない」。
マロンの使い方を紹介したYouTubeのビデオによると、ワンピースにしたり、スカートにしたり、頭から被ったり、ベルトにしたり、バッグにしたり、赤ちゃん用のハンモックにしたり、と100種類以上の多様な使い方があるという。
なぜ、遠く離れたフィリピンとジャマイカの文化でこのような偶然が生まれたのだろう。アフリカという言葉を繰り返す私に、店主が不思議そうな視線を向けていた。
(原彩子)