「貧困削減のために食料の無駄と廃棄を減らす」、世銀レポート

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世界銀行は2月27日、途上国の食料価格の動きや各国の政策をまとめた報告書「食料価格動向」を発表した。報告書は、国連食糧農業機関(FAO)と世界資源研究所の研究結果をもとに、世界銀行が年に4回発表している。

今回の報告書は、世界で1年間に生産される食料の3分の1から4分の1にあたる約40億トンが廃棄されていることを指摘し、大規模な食料廃棄の現状と対策の必要性を訴えているのが特徴だ。

食料廃棄が引き起こす最も大きな問題のひとつは飢餓であり、そもそも食料が足りていない多くの途上国では、食料廃棄が飢餓問題を深刻化させている。一方で、食料を過剰に供給するための無駄なエネルギー消費や農地を過剰に利用することによる地球温暖化ガスの増加といった問題も引き起こしている。

報告書によると、食料廃棄の実態は先進国と途上国で異なっている。先進国では、生産-流通-消費の過程で、年間一人あたり250~330キログラムの食料が無駄となっている。その多くを占めるのが、販売と消費の段階で起きている「意図的な廃棄」だ。これは、大規模小売店の圧力による過剰な生産や、大規模な広告による消費者の過剰な購入が主な原因であるという。

一方、栄養不良が深刻な問題となっている南アジアやアフリカなどの途上国全体でも、年間1人あたり120~220キログラムの食料が消費者の口に届くことなく廃棄されている。原因は、先進国とは異なり、貯蔵技術や交通網など運送のためのインフラが不十分であることから起きている。

ジム・ヨン・キム世界銀行グループ総裁は、プレスリリースで「世界全体で大量の食糧が廃棄され、失われているのは恥ずべきことだ。数百万人が毎晩空腹のまま眠りにつくのに、何百万トンもの食糧がゴミ箱に捨てられたり、市場に並ぶまでに無駄になったりしている」と指摘し、各国の協力の必要性を強調した。

食料廃棄を効率的に減らしていく取り組みは、まだ十分とは言えないものの、各地で始まっている。インドやタンザニアは、食料貯蔵の技術として、水の蒸発により貯蔵庫内の温度を低下される蒸発冷却器の技術が導入されている。また大規模な改善が望める政策として、途上国の道路や貯蔵施設などインフラ整備などが重要とされる。一方、先進国でも、食料管理の効率化に加え、食料の販売者や消費者の意識や行動を変えることが求められている。(鈴木瑞洋)