2030年まで経済成長しても貧困率は10%しか下がらない!? 世界銀行の報告書

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世界銀行は4月10日、貧困の削減状況と今後の課題についてまとめた報告書「万人のための繁栄」を発表した。報告書は、貧困撲滅のためには、経済成長だけでなく最貧困層がその恩恵を受けられるための政策が必要であると論じている。

報告書によれば、近年、途上国の多くは急速な経済成長を続けており、2014年の平均成長率は5.3%と見込まれている。しかし、すべての途上国が過去20年間と同じペースで2030年まで経済成長を続けたとしても、所得の配分が変わらなければ、世界の貧困率(1日1.25ドル以下で暮らす人の割合)は2010年の17.7%から10ポイントしか減少しないという。

その理由は、途上国が経済成長すればするほど、貧困から抜け出すことができる人の数が減っていくというジレンマがあるからだ。都市部から遠く離れた農村地帯や紛争地帯などに暮らす人々は、経済成長から取り残されてしまい、最貧困層と中高所得層との格差だけが拡大していくことになる。さらに所得格差の拡大は、貧困削減政策の効果を妨げることも指摘されている。

貧困の撲滅と最貧困層が豊かになることとは密接に結びついており、最貧困層の所得増加を中心に据えた成長戦略が重要となる。具体的な政策として、子どもの栄養不足の解消や雇用の創出など、次世代が貧困から抜け出すことのできる環境を整備する政策などが何より求められる。

また、政府が行う開発のための施策へ参加することで現金を受け取ることができる「条件付き現金給付」を取り入れ、貧困層に経済的インセンティブを与えながら貧困削減を推し進めることも提案されている。

全人口に占める貧困者数の割合が高い国は、インド(世界の貧困層の33%)、中国(13%)、ナイジェリア(7%)、バングラデシュ(6%)、コンゴ民主共和国(5%)だが、これら5カ国に世界の貧困層の3分の2が暮らしている。また、貧困率の高い国で見ると、コンゴ民主共和国(88%)、リベリア(84%)などがある。

世界銀行は2030年までに極度の貧困を撲滅し、途上国の低所得層40%の所得を引き上げながら国全体で繁栄を共有するという2つの目標を掲げており、報告書はこれらの国・地域に対して戦略的に資源を投入することが貧困撲滅に重要だとしている。

(鈴木瑞洋)