南部アフリカのボツワナでは女性も外に出てバリバリ働く。同国北部のボテティ郡の郡庁では、管理職26人のうち約半数の12人が女性だ。採用・昇進に男女格差はない。世界国際フォーラムの2017年版「世界男女格差指数」によると、ボツワナは総合順位でこそ46位だが、「経済活動への参加と機会」の指標に限ると6位と世界トップクラス(日本は総合、経済活動ともに114位)。出産後の職場復帰も一般的で、多くの女性が育児と仕事を両立させている。
ボテティ郡庁福祉・コミュニティ開発部(S&CD部)のスタッフは全部で18人いる。驚くのは女性の比率が多いことだ。8割近い14人が女性。3つある課のトップも2人が女性だ。
ボツワナの総人口に女性が占める比率は50.6%(30~40代では49.8%、2016年世界銀行)。それにもかかわらず女性の職員が多い理由についてS&CD部のオエシ・マトテンさん(30歳女性)は「性別で優遇される訳ではない。学歴などの資格と能力で採用・昇進が決まる・女性の職員が多いということは、女性の方が優秀なのかしらね」としたり顔だ。
ただそうは言っても、女性が仕事を続けるには「出産の壁」をどう乗り越えるかという現実もある。だがボツワナの女性にとってその壁は低い。S&CD部では妊娠を機に退職する人はほぼ皆無。3カ月の出産休暇を経て職場復帰する人が大半だ。女性スタッフ14人のうち11人に子どもがいる。
第3子を妊娠中のS&CD部家政課の課長を務めるフェイバリット・プムーサさん(35歳)も、妊娠が仕事のハンディになるとは思っていないと言い切る。「12月25日が出産予定日。出産休暇は12月27日~2018年3月20日の予定よ(ボツワナは12月25日26日がクリスマス休暇)。出産は3度目だし、不安はない。子どもが生まれる直前まで働くわ」と直前まで出勤した(12月27日時点ではまだ生まれていない)。
出産休暇が終わったら、親せきや有給のベビーシッターが育児をサポートする。S&CD部に勤める2児のシングルマザー(34歳)は「仕事中はベビーシッターを雇っている。ベビーシッター代は月に850プラ(約9000円)ね。手取りの給料は約5000プラ(約5万円)。ベビーシッター代が家計を苦しめることはないわよ」と話す。彼女は11月に昇進試験を受けるなど、キャリアアップにも貪欲だ。
女性が社会に進出するきっかけとなったのは、教育機会が男女で平等になったことだ。2017年版世界男女格差指数の「教育達成度」の指標ではボツワナは世界1位タイだった。日本に比べて高等教育への進学率で男女格差が少ない。インタビューに応じたボテティ郡庁の女性たちも全員が大卒だ。
ボテティ郡庁人事部のマーサ・ジョンソンさん(37歳女性)は「私の母(69歳)が若いころは、女性は教育を受けられなかった。女性が教育を受けられるようになったのは、1966年に英国から独立してから。その結果、女性も外で働けるようになった」と説明する。