NGO「PLAS」がウガンダのHIVシングルマザーにカフェ経営のノウハウ伝授、週310円の貯金も可能に

2年にわたるプログラムを卒業し、自立していく3期生のシングルマザーら。修了式では満面の笑みがこぼれる2年にわたるプログラムを卒業し、自立していく3期生のシングルマザーら。修了式では満面の笑みがこぼれる

HIV陽性のウガンダ人シングルマザーにカフェ経営のノウハウを伝える日本の国際協力NGOがある。ウガンダとケニアでエイズ孤児などを支援してきたエイズ孤児支援NGO・PLAS(プラス)だ。同団体の海外事業アシスタントマネージャーの山口和美さんは「2年のカフェ経営のプログラムを終えた卒業生の中には、週1万シリング(約310円)が貯金できるようになった人もいる」と胸を張る。このプログラムをPLASは2016年から始め、参加者は累計で39人にのぼる。

2年後はオーナーに

PLASが提供するこのプログラムの名称は「カフェ・ビジネスによる生計向上支援事業」(カフェ事業)。目的は、HIV陽性のシングルマザーがカフェを自力で経営できるようになり、それで生計を立て、貯金し、子どもの教育費を払えるようになることだ。

カフェ事業では、カフェの経営に必要な一連のノウハウを詰め込んだ研修を実施する。参加者が学ぶのは、調理の仕方から売り上げや原価の計算に至るまでだ。

プログラムの期間は2年。その後に参加者が独り立ちできる条件は、プラスが立て替えた開業資金の一部である80万シリング(約2万4000円)を完済することだ。原資となるのは、カフェ事業の期間中に共同経営するカフェの利益だ。

プログラムを実施する場所は、ウガンダの首都カンパラから北にバスで1時間半ほどのところにあるルウェロ県。現地の協力パートナーは、NGOヒーレコーズ(HE-RECODS: Health Response for Community Development and Sustainability)だ。シングルマザーは3〜4人でグループをつくり、1つの店舗を借りる。ここで実際にカフェを共同で経営する。

カフェは、いわば町の食堂だ。主な売り物は、冷蔵庫で冷やした炭酸飲料や、スティック状の揚げキャッサバ、「マンダジ」と呼ばれるドーナツなどだ。食事として、牛肉とトマトのシチューに“主食の盛り合わせ”を提供する店舗もある。1皿に、調理用バナナを蒸してつくる「マトケ」、メイズの粉を炊きながらねり上げる「ウガリ」、イモ、コメを少しずつ盛るのがウガンダ流だ。

カフェ事業の1つめの特徴は、PLASとヒーレコーズのスタッフがシングルマザーと伴走しながら、カフェ経営で生計を立てられるようにすること。カフェをシングルマザーが共同でオープンした後も、ヒーレコーズが定期的に店を訪問し、帳簿の確認もする。

2つめの特徴は、店を借りる前にまず、参加者の家の軒先で試験的に食べ物を売ることだ。参加者はだれひとり、カフェを経営したことがない。まず軒先で販売することで、調理の腕を磨きながら、カフェ経営に必要な力を少しずつつけていく。

3つめの特徴は、カフェの開業に必要な物品をPLASが購入すること。食器やテーブル、冷蔵庫、炭オーブンなどだ。金額は1店舗あたり日本円にして約5万円。冷蔵庫は1台約9000円だ。

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