アフリカ市場に特化した中国バイクメーカー「アプソニック」、ベナンの荷台付き三輪バイク市場でトップシェア!

ベナン最大の都市コトヌーにあるアプソニックの社屋の外観。テントには「Bonne qualité pour meilleur vie (より良い生活のための良い品質)」の文字が。手前に見えるのは、アプソニックの主力製品である荷台付き三輪バイクベナン最大の都市コトヌーにあるアプソニックの社屋の外観。テントには「Bonne qualité pour meilleur vie (より良い生活のための良い品質)」の文字が。手前に見えるのは、アプソニックの主力製品である荷台付き三輪バイク

アフリカ市場に特化した中国のバイクメーカーがある。広東省広州市に本社を置くAPSONIC(アプソニック)だ。同社は中国ではバイクを売らないが、西アフリカのベナンをはじめとするアフリカでバイクを組み立て、販売する。ベナンの「荷台付き三輪バイク(トライシクル)」市場でアプソニックはトップシェアを誇る。

■トライシクルは農家に大人気

同社のバイクのなかで半分の売り上げを占めるのが、荷台付き三輪バイクだ。主な顧客層は農家。収穫したパイナップルやバナナ、綿花などを荷台に乗せて運ぶ。アプソニックでバイク全般の販売を担当するアルメル・フエソさん(31歳)は「一度にたくさん運べるから(最大積載量390キログラム)、5台を所有する農家もあるほど」と胸を張る。

荷台付き三輪バイクの値段は1台80万CFAフラン(約14万5000円)から。綿花はベナン政府が買い上げるため1~5月の収穫期に農家にはまとまった収入が入る。「このため荷台付き三輪バイクもこの時期の売れ行きが良い」(フエソさん)

荷台付き三輪バイクは都市でも使われる。用途は、市場での大量の買い物、輸入業者の貨物輸送、一般家庭の引っ越しなどだ。

アプソニック製の荷台付き三輪バイクの2018年の販売台数は2000~2500台。300台売れた月もあるという。アプソニックはこの年、ベナンに最初に荷台付き三輪バイクを持ち込んだ中国メーカーのケウェゼキ(Kewezeki)を初めて抜き、トップシェアの座に就いた。両社以外にも、レオパード(Leopard)、パブロ(Pablo)といった中国企業が荷台付き三輪バイクをベナンで売る。

実はアプソニックの荷台付き三輪バイクは、他社に比べて10万CFAフラン(約1万8000円)ほど価格が高い。それでも売れるのは、レオパードなどは1年で壊れるといわれるからだ。「アプソニックのものは頑丈で壊れにくい。他社のものを購入していても、アプソニック製のエンジンに交換する人も多い」とフエソさんは説明する。

■バイクを買うとコメをもらえる

アプソニックは、荷台付き三輪バイクのほか、トゥクトゥクのような人を乗せる屋根が付いた三輪バイク、オートバイ、スクーターを売る。車種はおよそ30種類。全体の販売台数は2018年で4500~5000台だ。

頑丈さをウリにするだけでなく、販売台数を伸ばす工夫をしている。年に1~2回、2カ月かけてベナン国内の都市を回り、アプソニックのバイクのエンジンオイルを無料で交換する。走行距離が6000キロメートル未満のバイクに限っては、損傷した部品を無料で換えることも可能だ。

また11~12月に年末キャンペーンを打つのも恒例。バイクを買うと、コメや食用油、ソーダ飲料、安いスマートフォンなどをプレゼントする。「他のメーカーも前はやっていた。でも今はアプソニックだけ」(フエソさん)

拡大を続けるベナンの二輪市場で、現在圧倒的なプレゼンスを誇るのは中国メーカーのHaojue(ハオジュ)だ。これを追うのが、インドのBajaj(バジャジ)、アプソニック、中国のSanya(サンヤ)、中国のDayang(ダヤン)の順。ヤマハやホンダはトップ5には入っていない。

アプソニックがベナンに進出したのは2004年。ベナン以外にはトーゴ、コートジボワール、ガーナ、ケニアなどアフリカ16カ国で営業する。同社は中国本土ではなく、アフリカでの販売に特化するのは、アフリカは一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC、光化学スモッグに変化する)、窒素酸化物(NOx)の排出量などバイクに対する基準が中国に比べて甘いためという。

アプソニックでバイク全般の販売を担当するアルメル・フエソさん(31歳)。6年間中国に留学し、国際関係で博士号を取得した。フランス語のほか、中国語、英語を自由に操る

アプソニックでバイク全般の販売を担当するアルメル・フエソさん(31歳)。6年間中国に留学し、国際関係で博士号を取得した。フランス語のほか、中国語、英語を自由に操る