ニッケル採掘がインドネシアの村人の生活を壊す、「EVがある未来は想像できない」

泥を含む川の水が流れ込み、収穫できなくなった水田を視察するインドネシア環境省の職員ら(インドネシア・スラウェシ島)。写真は、インドネシア環境フォーラム(WALHI)南東スラウェシが提供泥を含む川の水が流れ込み、収穫できなくなった水田を視察するインドネシア環境省の職員ら(インドネシア・スラウェシ島)。写真は、インドネシア環境フォーラム(WALHI)南東スラウェシが提供

ニッケル需要が急増

低炭素技術に必要な鉱物の需要が2050年にどれぐらい増えるのか予測した世界銀行の報告によると、EVのバッテリーの材料となるニッケルの生産量は、2018年から約2倍に増やす必要がある。田中氏によれば、2018年の生産量は230万トンで、ほとんどがバッテリー以外の用途で使われたという。だが2050年にはバッテリー専用で年間226万8000トンが必要になる見込みだ。

インドネシア地質庁のデータでは、2020年7月時点でインドネシアのニッケル埋蔵量は 43億4600万トン。この9割が中部のスラウェシ島と東部のマルク諸島(マルク州)にある。

豊富な埋蔵量に注目し、トヨタやLGエネルギーソリューションはインドネシアへ進出。EVやEV用のバッテリーの開発を進めている。インドネシアは国内の製造業を育てるため、2020年1月以降、未加工のニッケル鉱石の輸出を禁止した。この規制を受け、EV分野への投資が増えているようだ。

採掘現場から出た土砂が引き起こしたがけ崩れ(インドネシア・スラウェシ島)。写真は、インドネシア環境フォーラム(WALHI)南東スラウェシが提供

採掘現場から出た土砂が引き起こしたがけ崩れ(インドネシア・スラウェシ島)。写真は、インドネシア環境フォーラム(WALHI)南東スラウェシが提供

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