テロを増やさない! アフガンで活動するシャンティ国際ボランティア会が教育にこだわるワケ

子ども図書館に集まる子どもたち(2021年1月撮影)子ども図書館に集まる子どもたち(2021年1月撮影)

ゼロからのスタート

20年に及ぶアフガニスタンでの活動について山本氏は「シャンティは教育を担う人材を育成してきた。だが、これからという時にタリバンの制圧が起きてしまった」と語る。シャンティは2020年末までに、小学校の校舎を43、学校の図書室を158設置。また、6667人の教員に読み聞かせの仕方などの研修を提供してきた。

2003年に教育支援を始めた際は、長年の紛争で教育の基盤が崩壊していた。「教育を受けられなかった大人も多く、教育や文化活動に対する理解がなかった。その状況を打破するために、図書室に置く本を地域のリーダーに見てもらうなどして、シャンティの活動は外国の文化の押しつけではないことを伝えた」(山本氏)

シャンティが特に大切にする活動は、ジャララバードにある子ども図書館の設置だ。文化活動が消えていたアフガニスタンで、子どもが遊べる場所を作った。子ども図書館では読書だけではなく、お絵描きや裁縫ができる。山本氏は「(子ども図書館を)子どもたちが楽しみを見つける場所にしたい」と語る。

子ども図書館や学校の図書室に置く本を充実させるため、シャンティは子ども向けの絵本も出版してきた。2020年末までに18万7800冊の本を出版。作品の種類は107タイトルに及ぶ。登場人物の女の子の服装を現地のスタイルに合わせるといった配慮を重ねた。活動を始めて5、6年が経った2007、8年には、女性が主人公の作品や女性で功績を残した人物の話なども出版するようになった。

この20年間の活動を通じて、地域の人たちから信頼を得た。山本氏は「シャンティの活動は、子どもの成長のために大切だと分かってもらえている。この信頼はタリバン政権になっても変わらない」と自信をもつ。

草の根の支援、止めないで

タリバンによるアフガニスタン制圧から2カ月半。国連世界食糧計画(WFP)は先ごろ、アフガニスタンでは11月以降、人口の半分以上にあたる2280万人が飢餓状態になると予測する報告書を出した。

こうした状況を懸念する山本氏は「食料や医薬品などの緊急人道支援を止めるべきではない。助けがなければアフガニスタンの人は、国際社会に対する信頼を失ってしまうかもしれない。その結果、テロなどの反社会的行為に向かいかねない」と危惧する。

山本氏が草の根の支援の大切さを痛感したのは、同団体のアフガニスタン人スタッフから聞いた話だった。アフガニスタン人スタッフは、パキスタンの難民キャンプで育った人が多い。彼らは「難民キャンプで唯一楽しかったのは、シャンティのような団体に支援してもらったこと。戦うこと以外のことを初めて学んだ。いつか祖国アフガニスタンに戻ったら同じような活動をしたいと思っていた」と山本氏に伝えてくれたという。

山本氏は「シャンティの活動を通じてひとりでも多くの子どもがテロ組織に行くことを止めたい」と意気込む。「何百万という難民の数を聞くと何をしていいのか分からなくなる。だがたとえ小さな活動でも、目の前にいる子どもがテロ組織にいくことを止める力になりたい」(山本氏)

子ども図書館では誕生会も開く(2020年12月撮影)

子ども図書館では誕生会も開く(2020年12月撮影)

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