サンパウロ在住の日系ブラジル人2世の斎藤綏子さん。被爆した1世の父と「ブラジル被爆者平和協会」を設立した。綏子さんが経営するスーパー「SUKIYAKI」は日系人を含む地元民の生活を支える被爆の記憶をブラジル社会へ
協会にはもう一つ大切な目的があった。被爆の実態をブラジル社会に伝えることだ。
活動のきっかけとなったのが、ブラジル人高校教師との出会いだった。父の活動を知った教師から「自分の生徒たちに話をしてほしい」と声がかかり、学校で被爆体験を語るようになった。
出会いはそれだけではなかった。8歳の時に長崎で被爆し、ブラジルを拠点に平和への願いを描き続ける画家・伊藤薫さんから「PAZ(平和)!」の絵をプレゼントされた。
また、広島で被爆し、その後遺症で白血病になり、平和への願いを込めて折り鶴を折り続けながら死んでいった佐々木禎子さんの折り鶴も、禎子さんの家族からもらった。
絵と折り鶴はサンパウロ州議会の議事堂の中に展示されることになった。「貴重な品を後世に残せる」と綏子さんはホッとしたと言う。
さらに、教師からブラジルの政治家にも話が伝わり、被爆の悲惨さを語る講演会を繰り返し開いた父・森田隆さんの名がサンパウロ州立の学校名に推薦された。
「被爆者を二度とつくらない」
ブラジル被爆者平和協会は2020年のコロナ禍を機に解散した。綏子さんは「子どもたちに活動を引き継いでほしいとは思わない。父や私の背中をずっと見てきたわけだから、それをどう受け止めるかは一人ひとりに委ねたい」と決めた。
ただ次世代に残したい願いははっきりしている。それは「被爆者を二度とつくらない」ことだ。

ブラジル被爆者平和協会が編集した冊子「南米在住ヒバクシャ魂の叫び」。ブラジルをはじめ南米に住む日系移民の被爆者の思いがつづられている
1 2














