マラウイで油田発見、悪夢か朗報か

アフリカ南東部に位置し、人口わずか1500万のマラウイで、油田が2012年になって発見された。世界銀行の2011年のデータによると、マラウイの国民総所得(GNI)は1人当たり340ドル(約2万7000円)と、世界でも最貧国のひとつだ。マラウイ湖の地下に眠る石油は、マラウイ国民を幸せにしてくれるのか、それとも富を集中させるだけでさらなる貧富の格差を招くのか。

マラウイのジョイス・バンダ大統領は、見つかった油田の調査・採掘権を英石油会社シュアストリームに与えた。食料の確保さえままならないマラウイでは油田があっても、それを自前で調査・掘削・精製する技術も、また資金もない。

「埋蔵石油がもし掘削できれば、マラウイは一瞬にして経済発展するだろう」と英連邦の関係者は予測する。そこで懸念されるのが、オイルマネーはマラウイ国民の生活を本当に良くしてくれるかどうかだ。

アフリカの他の資源国をみると、自国の天然資源をうまく活用してきたのがガーナ。ガーナ政府は、石油管理法を制定し、石油資源による歳入が国民に裨益するよう努力してきた。

だが、アフリカの多くの資源国はガーナとは対照的な道をたどっている。資源の豊さに反比例して、工業化や経済発展が遅れるという「資源の呪い」に悩まされているのだ。

石油資源に恵まれたアンゴラでは、石油産業の従事者がオーガニック野菜を食べ、芝生でのテニスを楽しむ一方、多くのアンゴラ女性は生き残るために「強制結婚」か「売春」の二者択一を迫られている。ナイジェリアでも、“石油プレイボーイ”が夢のような生活を送る間、多くの国民が貧困にあえぐ。

また赤道ギニアでは、情報統制の国家体制を敷くテオドロ・オビアン大統領が海外のゲストを、キャデラックに乗せて素晴らしいヴィラへと迎える。赤道ギニアは石油収入をてこに2ケタの経済成長を続けるが、国際社会からは「世界最悪の人権侵害国」との烙印を押されている。

「資源の呪い」に陥るにはいくつかのパターンがある。石油に依存するあまり他の産業が育たないこと、資源の確保をめぐって腐敗や争いが起きること、資源の富が宗主国に吸い上げられることなどだ。

マラウイの石油がマラウイ国民にとって救世主になるかどうかは、バンダ政権のかじ取りにかかっている。正しい道を選択すれば、マラウイは、資源が発見される可能性を秘める他の多くのアフリカ諸国にとっても希望の星となる。国際社会がすべきは、石油をどう役立てるのかといったマラウイ政府の方向性を監視・支援することだ。

マラウイ湖の石油は、政治家や軍人、また一部のビジネスマンのものでもない。マラウイ国民全員のものという当たり前の事実を忘れてはならないといえそうだ。(今井ゆき)