NGO「PLAS」がウガンダのHIVシングルマザーにカフェ経営のノウハウ伝授、週310円の貯金も可能に

2年にわたるプログラムを卒業し、自立していく3期生のシングルマザーら。修了式では満面の笑みがこぼれる2年にわたるプログラムを卒業し、自立していく3期生のシングルマザーら。修了式では満面の笑みがこぼれる

ライバル店からクレーム

初めてのカフェ経営。苦労は絶えない。

店舗を見つけるのも大変だ。2021年3月に独り立ちした3期生の4人が経営する店は、ルウェロ県の中にある比較的大きい町ワブトゥングルにある。手頃な物件はなかなか見つからなかった。やっとの思いで探し出した物件の契約の条件は、5カ月分の家賃を前払いすること。例外的にPLASが前払い金を用意した。

既存の店から経営を妨害されることもある。ある卒業生がオーナーとなったカフェでは、売る人が少ないカップケーキに目をつけて販売。ほどなくして店の人気商品となった。ところがカップケーキをかねてから売っていた店からクレームが入り、怖くなって売るのをやめてしまったという。

だがそうはいっても商品の差別化は必須だ。売り上げを少しでも増やせるよう、PLASは講習会を繰り返し開く。ルウェロ県の食堂では珍しいジューサーを使った生フルーツジュースづくりや、パンの焼き方を学ぶ。講習で身につけたパンを焼く技と炭オーブンで、1日2回の焼きたての丸いパンが人気となった店もある。

順調に進んでいたカフェ事業だが、大きな誤算もあった。それは、新型コロナウイルス蔓延防止のロックダウンだ。

2020年3月末からウガンダではカフェを開けられなくなった。ロックダウンはその後解除されたが、すでにお金は尽き、営業を再開するために必要な食材を買うことすらできなくなった。

この窮地を救おうとPLASはカフェにドーナツを大量発注した。食材の仕入れ費用を稼いでもらうためだ。購入したドーナツは緊急支援物資のひとつとして、コロナ禍で生活が困窮したシングルマザーやエイズ孤児に配った。

シングルマザーらはいまも必死にカフェを開け続ける。夜間の外出禁止令がいまだに出されるなか、夜遅くまで営業できない。売り上げもコロナ前ほど見込めない。

山口さんは「カフェの2021年2月の売り上げは80万シリング(約2万4000円)に回復した。そこから家賃や光熱費も含めた経費の50万シリング(約1万5000円)を引くと、30万シリング(約9000円)が手元に残った」と話す。

せっけんも買える!

カフェ事業はシングルマザーの生活を一変させた。3期生の中には、最大で週1万シリング(約310円)を貯金できるようになった人も現れた。

3期生のエスタさんはこのプログラムに参加する前、農家から野菜を買って、それを市場で売って暮らしていた。日本円で300円しか収入がない月もあった。小学校と高校に通う2人の子どもの教育費の支払いは常に遅れてしまっていた。

「PLASの支援でカフェを始めてから、子どもの教育費もきちんと払えるようになった。いままで我慢していたせっけんや肉、魚も買える。貯蓄もできるようになった」(エスタさん)

ウガンダでは小学校から高校まで授業料は無償だ。だが制服や文具、毎年の進級テストにはお金が必要だ。プラスの小島美緒理事・事務局長によると、小学校の低学年では年間5000円、6年生や7年生では年間1万円ほどかかるという。

1 2