ケニアのLGBTQ+クラブに潜入してみた、そこで見たのは秘密・差別・ナンパ・友情・闘い‥‥   

ケニア・ナイロビのダウンタウンにある、LGBTQ+専用のクラブ「クラブLA」。店内では真っ赤な照明の下、踊り、歌い、抱き合うLGBTQ+たち。日ごろのストレスを発散するケニア・ナイロビのダウンタウンにある、LGBTQ+専用のクラブ「クラブLA」。店内では真っ赤な照明の下、踊り、歌い、抱き合うLGBTQ+たち。日ごろのストレスを発散する

カミングアウトするLGBTQ+たち

「LGBTQ+がケニアで認められるには、まだまだたくさんのハードルがある。でも少しずつ良くなっている」。ジェイソンの話を聞いていたケファがこう切り出した。ケファがこう言うには理由がある。少しずつだがLGBTQ+をカミングアウトをする人が増えてきたのだ。

ロミオは去年、ケニアの有名なテレビ司会者であるアニタ・ンデルさんのユーチューブの料理番組に出演した。ピンクでシースルーのローブにTバックを食いこませたロミオは、お色気たっぷりにエッグベネディクトを作った。

ンデルさんはその後、ツイッターでこうつぶやいた。

「私がLGBTQ+として経験したことを自分の子どもには経験してほしくない」

このツイートに対して賛成・反対さまざまな意見が上がった。「人には自分の性別を自分で決める権利がある」と同調するものから、「お母さんが2人いることを子どもにどう説明するんだ」といった批判まで。このツイートには1万6000以上の「いいね」が付き、2000回以上リツイートされた。

ンデルさんはまた、LGBTQ+のコミュニティーに向けてツイッターでこう訴えかけた。

「今を生きよう。周りの人が人生を楽しんでいるのに、あなたはなぜそうしないの?」

この言葉を受けてケファは私にこう耳打ちした。

「自分も今、ユーチューブを使ってシンガーとして活動している。名前が売れたら、ゲイだとカミングアウトしようと思ている。社会に大きなインパクトを与えるためにね」

命懸けの脱出

楽しい時間もあっという間に過ぎ、閉店の7時になった。お開きの時間だ。客がまだ騒いでる中、いち早くクラブから退散する。ウーバーでタクシーを呼び、さあ帰ろうとしたときに気づいた。出口のドアがロックされている。

これには理由がある。店内の客を守ろうとするクラブLAの配慮だった。LBGTQ+にとってクラブの中は天国だが、外は別世界。安全という保障はない。

店の外の人はここが何だか知っている。クラブから出てきた人間は十中八九LGBTQ+。私はストレートだが、店から出てきたらそんなの関係ない。クラブLAから出てくる、お金を持っていそうな外国人は恰好の標的だ。

外は人通りも多く、いかにもやんちゃそうな若者がたむろしている。私はタクシーを店の前ぎりぎりまで寄せ、出口のドアが開くと店を飛び出し、タクシーに滑り込んだ。

LGBTQ+に見たマンデラの教え

タクシーの中で一息ついたあと、ドライバーに行き先を告げ、タクシーは出発した。後ろの窓から、電気の消えたクラブLAがどんどん小さくなっていくのが見える。

タクシーは騒がしいダウンタウンを抜け、私が泊っているナイロビ西部のウッドリーに向かう。ナイロビの大動脈、ンゴングロードを走るタクシーから外を眺めながら、今日出会ったLGBTQ+の友人たちのことを思い返した。

LGBTQ+というだけで、暴行を受け、集団リンチにあう。警察も助けてくれない。そんな中、命を懸けてユーチューブに出演したりして、自分の性を正直に表現し続けるLGBTQ+の人たち。

「自分自身が恐怖から自由になったとき初めて、人を自由にすることができる」

彼らを見て、ネルソン・マンデラが1994年の大統領の就任式で語った言葉を思い出した。

鍵が閉められたクラブLAの出口

鍵が閉められたクラブLAの出口

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