ケニアのLGBTQ+クラブに潜入してみた、そこで見たのは秘密・差別・ナンパ・友情・闘い‥‥   

ケニア・ナイロビのダウンタウンにある、LGBTQ+専用のクラブ「クラブLA」。店内では真っ赤な照明の下、踊り、歌い、抱き合うLGBTQ+たち。日ごろのストレスを発散するケニア・ナイロビのダウンタウンにある、LGBTQ+専用のクラブ「クラブLA」。店内では真っ赤な照明の下、踊り、歌い、抱き合うLGBTQ+たち。日ごろのストレスを発散する

目線が合うのは男、男、男

アプリを眺めているうちに、ナイロビの中心部を走るトムムボヤストリートにあるクラブLAに到着した。LGBTQ+専門のクラブとあって目立たないようにしているのかと思いきや、外から丸聞こえなほどの爆音をかけていた。私はクラブLAの入口で、もう1台のタクシーが着くのを待った。

そのとき、酔っぱらった男が見知らぬアジア人の私を見つけて難癖をつけてきた。「おまえは誰だ?」「この店がどんなところか知っているのか?」「よそ者は出ていけ!」

酔っぱらいのたわごとなので軽くいなしておいたが、彼の気持ちもわからなくもない。クラブLAは、日ごろ虐げられているLGBTQ+の人たちが自分の本当の姿を出せる数少ない場所。ストレートのムズング(黒人以外の外国人の総称)が軽々しく足を踏み入れていい場所ではない。「リスペクトを忘れないように!」。そう自分に言い聞かせ、到着した他のLGBTQ+の友人たちと一緒に中に入った。

店内ではレッドライトの照明の下、人々が激しく動き回っていた。男、女、男らしき女、女らしき男、みんな踊り、腰をくねらす。新型コロナで夜間禁止令が出ているとは思えない盛り上がりだ。マスクをした人は一人もいない。

テーブルに着いた私は、モーガンが注文してくれたケニアのビール・タスカラガーをグイっと飲み込み、周りを見回す。すると目線が合うのは男、男、男。ウインクだけにとどまらず、こっちへ来いと手招きしてくる。世界各国のクラブに足を運んできた私だが、ここまで男と目線が合うクラブは初めてだ。私はひげでガタイはいいほう。ボトムの人にはウケがいいのだろうか。異様な空気の中、クラブ内を少し徘徊してみた。

ゲイというより大切な友

盛り上がりを見せるクラブLA。LGBTQ+の客は日ごろのうっ憤を晴らすかのように歌い、踊り狂う。そんな中、端のほうで男らしい男たちが鋭いまなざしでフロアを見ている。クラブLAはLGBTQ+専門ではあるが、ストレートの男性や女性が入れないわけではない。

「レズビアンの女の子(フェミーのほう)はかわいい子が多い。ストレートの男たちはクラブLAに来てレズビアンの女の子を狙う」。ルビーのこんな言葉を思い出した。彼らがそのストレートな男たちか。LGBTQ+の人たちが我を忘れて楽しんでいる中、男たちはハンターのような目でフェミーを狙っていた。

席に戻ると、ジョニー・ウォーカーが友人のジェイソンを紹介してくれた。彼はストレートの男の子だが、クラブLAの常連。純粋にクラブの雰囲気が好きでよく来るのだという。そんな彼に直球で質問してみた。「ゲイの友だちをもって問題はないのか」

ジェイソンは少し考えた後、話し始めた。

「『なんでゲイなんかとつるんでいるんだ』と、僕と距離をとる友人もいる。でもゲイとかレズビアンとかバイとか、それはあくまで個人の選択。僕にとって大切なのは相手がどんな人かということ。ジョニーはいい奴だし、大切な友だちのひとりさ」

そういってジョニー・ウォーカーと肩を組むジェイソン。それを見て、心が洗われる気がした。

ナイロビの中心部を走るトムムボヤストリートにあるクラブLA。目立つ看板

ナイロビの中心部を走るトムムボヤストリートにあるクラブLA。目立つ看板

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