自転車で世界を周るスウェーデン人が西サハラの解放を訴え、「みんなで声をあげれば社会は動く」

サハラ・アラブ民主共和国のライダースーツに身を包むゴドビさん(右)とラドラさん(左)。自転車の後ろで国旗がはためくサハラ・アラブ民主共和国のライダースーツに身を包むゴドビさん(右)とラドラさん(左)。自転車の後ろで国旗がはためく

砂漠の中の砂漠にある難民キャンプ 

この旅の始まりは、SNSに届いた1つのメッセージだった。パレスチナの子どもに義足を届ける活動をしていたラドラさんは2017年ごろ、モロッコの支配下にある西サハラに住むサハラーウィの若者から「西サハラも助けて欲しい」とお願いされた。

西サハラの状況を知らなかったラドラさんは2019年、モロッコから西サハラに入った。そこで見たものは紛れもない植民地だった。

至る所にモロッコ軍の検問が置かれる。西サハラの都市であるエルアイウンやダーフラの街中には警官や兵士がうようよいた。サハラーウィは拘束されると男性は拷問、女性はレイプされる。時には殺されることも。仕事は少なく、モロッコ人が嫌う仕事に就くしかないという。

ラドラさんは、ゴドビさんと自転車の旅に出る前の2022年1月、アルジェリアにある難民キャンプを訪れた。難民キャンプがある地域は「砂漠の中の砂漠」といわれる過酷なところ。夏場は50度を超え、冬の夜は氷点下にもなることもある。

ゴドビさんは「難民キャンプでは食べ物はWFP(世界食糧計画)から提供される。だが緊急用のものしかなく、そもそも量が足りない。私はキャンプに入って1週間で身体を壊した。あそこは人が住めるところではない」と話す。

国連は、西サハラを植民地支配が終わっていない「非自治地域」と定義する。西サハラの主権はサハラーウィにあるというのが国際社会の見解だ。国連、モロッコ、サハラーウィを代表する組織ポリサリオ戦線の3者は1991年、独立の是非を決める国民投票を実施すると合意した。

しかし独立を阻止したいモロッコは国民投票の条件に難癖をつけ、実施を拒んできた。モロッコを支持する国が大半を占める国連安全保障理事会の影響から、国連の動きも鈍い。

「西サハラ問題はシンプルだ。モロッコが西サハラを武力で支配しているだけ。これは許されることではない。世界的に見ても一番初めに解決されるべき問題だ」 

ゴドビさんはこう力を込める。

これまで10校以上の大学で講演をした。「日本ではあまり活動家がいないのか、学生は私たちを見て驚いていた」とゴドビさんは笑顔を見せる

これまで10校以上の大学で講演をした。「日本ではあまり活動家がいないのか、学生は私たちを見て驚いていた」とゴドビさんは笑顔を見せる

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