ベネズエラで続く反米独裁政権、支持率2割以下、2024年後半の大統領選でどうなる?

マリア・コリーナ・マチャド氏マリア・コリーナ・マチャド氏(2023年10月25日の記者会見)。マチャド氏のインスタグラムから引用

不法移民を減らしたい米国

マチャド氏自身にも課題がある。発言がラディカル(過激)すぎることだ。

坂口さんは「いち政治家ならそれでも良い。でも大統領候補になるなら、穏健派とも意見をすりあわせ、反政府派をひとつにまとめないといけない。逆にそれができれば、彼女は求心力をもてる。数少ない女性の大統領候補だし、何よりとても肝が坐っているから」と話す。

大統領選の実施が今回決まったのは、中米バルバドスで2023年10月17日に開かれたマドゥロ政権と野党連合(反政府派)による対話でのことだ。米国の代表者も同席し、ノルウェー政府が仲裁を務めた。「マドゥロ政権と米国はここに至るまで長い間、ベネズエラの大統領選の実施について水面下で話を進めてきたようだ」と坂口さんは説明する。

公正な大統領選の実施を条件に米国が約束したのが、ベネズエラに対して米国が2019年から課している経済制裁を緩めることだ。この制裁は、ベネズエラの国営石油会社PDVSAとの取引を禁じるもので、米国企業だけでなく欧州や日本など第三国の企業も制裁の対象となる。

坂口さんは「PDVSAの収入は経済制裁を受ける前、ベネズエラの外貨収入の95%を占めていた。それでもマドゥロ政権が持ちこたえているのは、制裁を恐れない中国とインドが、制裁をかいくぐって石油を買っているから。リスクを負わせるからにはPDVSAは大幅な割引をしなければならない」と指摘する。

経済制裁を緩めることは、2024年11月に米国の大統領選を控えるバイデン米大統領にとっても国内に向けたPRにもなる。ベネズエラから米国にやって来る不法移民は2010年に比べて約3倍に急増。もともとは米南部に多かったが、ここ1年ほどはニューヨークやワシントンDCなどの大都市でホームレスとなって暮らすベネズエラ人が増えているという。

「ベネズエラからの不法移民を、米国人は日常的に目にするようになった。米国が直接関与していないイスラエル・パレスチナやウクライナの問題よりも、ベネズエラに働きかけてベネズエラ人移民を減らすほうが、米国の有権者に対してポイントを稼げるとバイデン氏は判断したのだろう」(坂口さん)

バイデン氏にとって経済制裁を緩める思惑は、ベネズエラからの不法移民の減少だ。「ベネズエラの経済は破綻しており、マドゥロ政権は経済運営ができない。政権交代して経済政策が転換すれば、状況は急速に良くなるはず。3~5年のスパンで見れば、米国への不法移民は減るだろう」。坂口さんはこう予測する。

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