世界の難民・国内避難民1億1780万人へ10年ぶり減、「強いられた帰還」が増えただけ

6月20日の「世界難民の日」にあわせてUNHCRが毎年発表する「グローバルトレンド」の2025年版の表紙

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は6月11日、紛争や迫害などで故郷を追われた難民・国内避難民などの数が2025年末時点で1億1780万人だったとする年次報告書「グローバルトレンド2025」を発表した。前年から4%の減少(約540万人減)。2015年以来10年ぶりに減ったことについてUNHCRは、多くの難民が「帰還を選んだ」のではなく、避難先での戦闘などを理由に帰還を強いられたのが実態と指摘する。

国外からの帰還民、最多はアフガン

グローバルトレンド2025の最大の特徴は、難民・国内避難民の数が10年ぶりに減少したことだ。

その理由は帰還民の急増。報告書によれば、「国外から母国へ戻った元難民」が440万人、「国内の別の地域から故郷へ戻った元国内避難民」は1030万人で、あわせて1470万人にのぼった。この数字は前年から49%の増加。1965年に統計をとり始めてから2番目に多いという。

「帰還民の増加」と「難民・国内避難民の減少」は一見すると良いニュースに映る。だが報告書が繰り返し強調するのは「その内容」。帰還民の大半は故郷が安全になったから帰ったのではなく、避難先での紛争の激化、滞在国の政府の政策変更、国内避難民集落の閉鎖などで「仕方なく戻った」のが現実だからだ。

帰還民の総数(元難民、元国内避難民)を出身国別でみると、コンゴ民主共和国(360万人)、スーダン(360万人)、シリア(330万人)、アフガニスタン(200万人)、ウクライナ(71万8300人)、ミャンマー(41万5200人)の多さが際立つ。上位6カ国で帰還民全体の92%を占める。

コンゴ民主共和国では、反政府武装組織「3月23日運動(M23)」が同国東部の北キブ州の州都ゴマを制圧。国内避難民の集落を閉鎖したこともあって360万人が帰還を強いられた。その一方で、2025年は新たに390万人が国内避難民となった。コルタンやタングステン、タンタルなど豊富な資源が眠る東部州での紛争が激化しているからだ。

「国外からの帰還民(元難民)」に絞ると、アフガニスタンが194万7200人で最多。主な避難先であるイランの政府が200万人以上のアフガニスタン難民が持つ滞在証明の更新をストップし、7月6日までの帰国を求め始めたのが理由だ。いわば「政策による強制送還」だ。

イランなどで長年暮らし、また現地生まれの2世もいる。急な対応を迫られたことから帰還民らは資産の喪失、家族離散のリスクにさらされているという。

母国アフガニスタンに戻ってきても平和・自由に暮らせるわけではない。女子が教育を受けられなかったり、女性差別に直面したり、また仕事に就けるのかといった問題が残る。

帰還民が多い半面、2025年に他国へ新たに避難したアフガニスタン難民も19万1400人を数えた。

イスラエルの空爆もシリア難民を帰還させた

国外からの帰還民が次に多かったのはシリア(134万1200人)だ。アサド政権の崩壊もあって、主な避難先だったトルコやレバノン、ヨルダンからシリア難民は多く戻った。ただレバノンを例にとると、イスラエル国軍による激しい空爆を受け、命からがらシリアに逃れてきたケースも多い。むしろ「戦闘の巻き添えからの避難」だ。

帰還民にとって帰国後の現実は厳しい。破壊された家、インフラ不全、限られた雇用機会。シリアの総人口2560万人の6割超(1560万人)が人道支援を必要としているという。

国外からの帰還民が3番目に多かったのはスーダン(65万1500人)だ。複数の要因が絡むものの、最大の避難先であるエジプトでの生活費が高騰し、これに耐えられなくなった、というのも一因。スーダン難民はエジプトでは難民キャンプに入るのではなく、都市で分散して暮らす。今回の帰還は「生活困窮による帰還」との見方もある。

スーダンは一方、いまも難民を出す側面もある。2025年に新たに他国へ逃れたスーダン難民は95万2700人と多い。国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の紛争が4年目に突入する中、スーダン難民の総数は2025年末に280万人へと前年から35%増えた。

国外からの帰還民(帰還した難民)の国別の数の推移。避難先の情勢が悪化したこともあって急増。母国の状況が良くなっていないにもかかわらず、仕方なく戻るケースが多い(「グローバルトレンド2025」から引用)

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