2016年には「1%の最富裕層」が世界の富の半分以上を保有する、オックスファムが報告

1%の最富裕層と、残りの99%が所有する富の割合の推移(WEALTH: HAVING IT ALL AND WANTING MOREから引用)。最富裕層が占める富の割合は右上がりなのに対し、99%の富の合計は右下がり

1%の最富裕層と、残りの99%が所有する富の割合の推移(WEALTH: HAVING IT ALL AND WANTING MOREから引用)。最富裕層が占める富の割合は右上がりなのに対し、99%の富の合計は右下がり

国際NGOのオックスファムはこのほど、世界の上位1%に相当する「最富裕層」が2016年にはその他の99%を上回る富を有するだろう、と衝撃的な報告をした。最富裕層の中にはマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者だけでなく、ソフトバンクの孫正義社長、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長ら日本人も名を連ねる。オックスファムのウィニー・ビヤニマ事務局長は「貧富の差は世界的に急拡大している」と警鐘を鳴らす。

最富裕層の富の合計は、2009年には世界の富の44%を占めていたが、2014年には48%に増加した。これは最富裕層の成人1人当たり2700万ドル(約32億円)の資産を保有することを意味する。

また2014年のデータでは、残る52%の世界の富の大半(46%)は、富裕層上位1%を除く上位20%の人たちが所有している。その他の80%の人は、全体の富の5.5%を分け合う。この80%の人たちの成人1人当たりの保有資産は、最富裕層の700分の1の3851ドル(約45万円)に過ぎない。オックスファムは「所得格差の拡大を抑制しなければ、最富裕層が有する富の割合は全体の50%を超えるだろう」と予想する。

オックスファムは、アメリカの経済誌フォーブスのデータを報告書に引用している。同誌が「億万長者」に番付する1645人の20%は金融・保険部門に出資し、現金資産をここ1年で12%増やした。また製薬・保険医療部門に出資する億万長者は、正味資産を47%増加させている。さらに億万長者の3分の1以上が一部またはすべての資産を相続している。

オックスファムは「億万長者が、自らに有利になるような法律や制度のために、莫大な資金をロビー活動などに動員している」と指摘。2013年には、10億5000万ドル(約1241億円)以上が、金融・保険・製薬・保険医療業界のためのロビー活動に使われたと推計している。ロビー活動が格差を是正するための税制改革の障害になる、と同団体は懸念する。

2009年から2014年の間に、億万長者番付の上位80人の富がおよそ2倍になった。一方、2014年の下位50%の人たちの富の量は、2009年を下回る(WEALTH: HAVING IT ALL AND WANTING MOREから引用)

2009年から2014年の間に、億万長者番付の上位80人の富がおよそ2倍になった。一方、2014年の下位50%の人たちの富の量は、2009年を下回る(WEALTH: HAVING IT ALL AND WANTING MOREから引用)

この報告は、ダボス会議の開催に伴って発表された。ダボス会議とは、世界経済フォーラムが毎年1月にスイスのダボスで開催する年次総会で、世界中から実業家や政治家が集まる。ダボス会議の共同議長を今回務めるビヤニマ・オックスファム事務局長は「格差に対する取り組みに失敗すれば、ここ数十年の貧困削減の取り組みと成果を後退させることになる」とコメントした。