“アルビノ狩り”がタンザニアで多発、遺体の取引価格は平均年収の120倍にも

東アフリカのタンザニアで、アルビノ(先天的に色素が欠乏する疾患)の人たちを襲撃する事件が相次いでいる。アルビノの人たちの体の一部が幸運や富をもたらすと呪術師が信じ、呪術に使っているからだ。

同国では1月18日、1歳のアルビノの男児の遺体が、両手足を切り取られた状態で発見された。呪術への使用を目的とする殺人だ。2014年12月にも北部で、地元の暴力団が4歳のアルビノの女児を殺害する事件が起きた。

国連の人権専門家は、2015年10月の選挙を前にタンザニアでアルビノの人たちへの襲撃が増加していると警鐘を鳴らす。政治家らは選挙での勝利を願って、呪術師を頼っているという。

アフリカ全域をカバーするメディア「オールアフリカ」によると、2006年から2012年7月までの6年半、タンザニアでは100人以上のアルビノの人たちが襲われた。うち殺されたのは71人。31人は一命をとりとめたが、大半が障がいを負った。

タンザニアではアルビノの人の遺体は破格の値段で取引される。英ガーディアンの2月18日付記事によれば、体の一部は約600ドル(約7万円)、全ての部位がそろった遺体は7万5000ドル(約890万円)の値が付く。タンザニアの国民1人当たりの平均所得630ドル(約7万5000円、世界銀行2013年)の約120倍だ。

米国の調査会社ギャラップが2010年に発表したデータは、タンザニア人の64%が呪術を正当なものと認識していることを明らかにした。タンザニア・アルビノ協会の事務局長は「(アルビノの人々と私たちの)違いは肌の色であって、中身は全く同じということをタンザニア人は理解していない」と懸念する。

こうした事態を重くみるタンザニア政府は、アルビノの人たちの誘拐や殺害を防ぐために「アルビノの子どもたちを特別の施設に収容して保護する」「呪術師の活動を禁止する」などの措置を採っている。

タンザニアのアルビノの発生率は1400人に1人の割合(アルビノの人口は3万3000人)。これに対して西欧諸国の発生率は2万人に1人にすぎない。比率の高さの要因として近親交配が考えられている。