シリア難民300万人突破、人口の半数から家を奪う紛争

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国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は8月29日、シリア難民の数が同日中に300万人を超える、と発表した。およそ8人に1人が周辺国に逃れた計算。これ以外に650万人がシリア国内で避難している。合せるとシリア人口(約2200万人)の約半数が家を追われたことになる。

シリア難民を多く受け入れているのが、レバノン(114万人)を筆頭に、トルコ(81万5000人)、ヨルダン(60万8000人)の3カ国だ。ただ受け入れ国政府は、難民登録された300万人のほか、数十万人のシリア人が周辺国に逃れている、と推測する。

UNHCRによれば、シリアから国外へ逃れる道のりは以前より険しくなっているという。国境付近の検閲所で多くの避難民は「わいろを払え」と強要される。砂漠を越え、ヨルダン東部に逃れる難民は密航請負業者に安全と引き換えに1人約100ドル(約1万円)を請求されるのが常だ。

シリア難民の多くは国外へ脱出するまでに1年以上、安全を求め、シリア国内を村から村へと転々としている。このため隣国にたどり着いたときは恐怖、精神的ショック、疲労で打ちのめされ、また所持金もほぼ底をついた状態だという。

アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は「シリア危機は今世紀最大の人道危機。国際社会はこれまで、シリア危機に対して惜しみない支援を届けてきた。しかしそれでも必要な額に到底追いついていないのが厳しい現実だ」と訴える。

シリア紛争が始まったのはいまから3年半前の2011年1月。シリア難民の数はいまや、UNHCRが保護対象とする難民の中で最多となった。64年に及ぶUNHCRの歴史上、シリア危機への対応は最大規模の事業となっている。(堤環作)