「ティグライ紛争はアビィ首相の圧政から始まった」 ティグライ人の米大学教授がエチオピア政権を批判

米国サウスカロライナ医科大学のムルゲタ・ガブラエグゼビア教授。エチオピア北部のティグライ州の出身だ(写真:本人提供)米国サウスカロライナ医科大学のムルゲタ・ガブラエグゼビア教授。エチオピア北部のティグライ州の出身だ(写真:本人提供)

――今後、停戦合意はできるか。

「難しいのではないか。エチオピア政府は2021年6月に停戦を宣言したが、これはTPLF側との対話が一切ない中で発表された。首都とティグライを結ぶ道は封鎖されたまま。生活必需品の12%しかティグライに入ってこなかった。TPLFや他の武装組織はこれに反発し、戦いを続けて勢力を拡大していった。

2021年9月には米国が両者に対して和平交渉を始めるよう要求した。TPLFはこれに同意したが、アビィ首相は拒否した」

――今後の展望は。

「アビィ首相はもうすでに負けた、と私は考えている。本人は前線に行ったと発表しているが、多分エリトリア側の前線だ。状況が悪くなったらすぐにエリトリアに逃げ込むだろう。

今後はTPLFやオロモ連邦議会、オロモ解放戦線などが暫定政権を作り、国のあり方を議論していくだろう」

――ガブラエグゼビア教授は何を望むか。

「なにより平和になってほしい。私は生まれたのはエチオピアが一党独裁の軍事政権となる1年前の1973年。TPLFと軍事政権の紛争が終わったのは私が大学1年生の時だ。平和になったことで私は勉強を続けらけ、今のキャリアがある。

だがまた紛争が始まってしまった。ティグライに住む母とは1年以上も連絡が取れない。胸が張り裂けるほど苦しい。エチオピアで進めていた公衆衛生のプロジェクトもとん挫したままだ。紛争が終わり、プロジェクトが早く再開することを望む」

*この記事に書いている内容はガブラエグゼビア教授個人の見解であり、所属先の見解を代表するものではありません。

ムルゲタ・ガブラエグゼビア氏
エチオピアのティグライ州出身。米サウスカロライナ医科大学教授・健康科学科副学科長。NGO「ティグライ人のための安全と正義」の副代表も務める。国際保健の専門家で、過去15年にわたってエチオピアの公衆衛生向上のプロジェクトに携わる。ティグライ紛争の勃発後、紛争による医療への打撃と人道危機に関する論文を発表。2021年10月に開かれたた米国公衆衛生学会の年次学会では「ティグライと戦争による公衆衛生の危機」というタイトルで発表した。

紛争が起きる前に、ティグライ州のアスクム大学で健康科学の教授と一緒に写真に写るガブラエグゼビア教授(左)。アスクム大学は紛争で大きな被害を受けた(写真提供:ガブラエグゼビア教授)

紛争が起きる前に、ティグライ州のアスクム大学で健康科学の教授と一緒に写真に写るガブラエグゼビア教授(左)。アスクム大学は紛争で大きな被害を受けた(写真提供:ガブラエグゼビア教授)

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