軍政に抗議し職場放棄し続けたミャンマー人女性、「今は家族への仕送りが一番大事」

飛行機のネックレスを身につけているエイプリルさん(32歳)。イニシャル「KR」が刻まれており、Khar Ra(カーラー)という、ミャンマーの著名な俳優からきている。2021年の軍事クーデター以降は反軍政活動を続けている。「Fly to freedom」という意味が込められている。「今の生活に希望はない。幸せでない。それでも正しいと思う道を歩み続けたい」(エイプリルさん)

うそと笑顔で出国

エイプリルさんは、チェンマイに避難することを計画した。ミャンマーとの国境にあるタイ側のメーサイに入るルートを目指し、高速バスでメーサイに接するミャンマー・シャン州のタチレイへ向かった。

「タチレイに着くまで国軍の検問所がたくさんあるため、バスの中で安心して眠れなかった。男性はPDF(軍事クーデターに対抗する、民主派政府が設立した武装組織)の兵士だと疑われていたが、私は女性だから助かった」とエイプリルさんは言う。

とはいえエイプリルさんの身分証明書の裏には「国営銀行に勤務」と書かれていた。そのため検問を通る際に国軍の兵士に怪しまれた。

国軍の兵士に「大学は卒業したのか。銀行で働いていないのか」と聞かれた。大卒だとCDMに積極的にかかわっていると疑われるからだ。

エイプリルさんは「大卒ではない。銀行で働いていない」とうそをつき、心の中にある恐れを無理やり笑顔で隠した。一歩間違えればその場で撃たれて死ぬか、拘束されるか、という悲惨な未来が待っていた。

ちょうどそのとき、別の若者グループがやって来た。国軍兵士はそちらに気が入った。おかげで彼女は危機一髪を乗り越えられた。「若者たちがあのとき来ていなければ、私は捕まっていた。怖かった」と心情を吐露する。

なんとか無事に検問所を通過したエイプリルさんはタチレイにたどり着いた。この町に暮らすおばの家で寝た。

タチレイから川を渡ると、対岸はタイのメーサイだ。タチレイのイミグレーションに身分証明書を預けないとタイに入れない。ところがパスポートを持たない彼女にとって身分証明書は重要。エージェントを使って、身分証明書を預けずに入国できるよう便宜を図ってもらった。

彼女はようやくタイに入国。先に住んでいた妹と再会し、チェンマイでの新しい生活が始まった。2024年3月6日のことだった。

「給料減らすぞ」

エイプリルさんが初めて得た仕事は、中国人が暮らす大きな家の掃除と雑用だった。住み込みで、月収1万2000バーツ(約5万7800円)。

掃除の仕事のスケジュールは朝6時に起床、朝食の準備とペットの散歩に行く。朝8時から夕方5時まではひたすら家中を掃除する。夕方の7時に自分用の夕食をとるという流れだ。

彼女は家主のうそと想像以上に体力を求められる環境に苦しんだ。キリスト教徒のエイプリルさんは毎週日曜日に教会に通う。そのため「日曜日は休み」という条件で就職した。

ところが日曜日に仕事に行かなった際、文句を言われた。「彼女(エイプリルさん)は掃除の経験がないから嫌だ」と悪口を叩かれ、給料を減らすぞと脅された。中国語を学んだことのあるエイプリルさんは、家主の家族が発する悪口を理解できたことが辛かった。

2日でその仕事を辞め、給料を1000バーツ(約4800円)もらった。別の仕事に就くまで2カ月かかった。ミャンマーから持ってきた5000バーツ(約2万4000円)のおかげで生き延びられた。

1 2 3