ミャンマー中部のピイ出身で、民主派の武装勢力「国民防衛隊(PDF)」の衛生兵として約3年戦ったサンシャインさん。現在はタイ・チェンマイで暮らす。サンシャインさんが取材中に見せてくれた写真には、肩を組んで笑顔を見せるPDFの兵士らが写っていた。彼らのことを繰り返し「きょうだい」と呼ぶなど、戦場を離れても家族のような存在だ(チェンマイで撮影)ミャンマー国軍が2021年2月にクーデターを起こしてから5年半――。民主主義を取り戻すために戦い続けるか、心臓病を抱えた母を助けるか、2つの思いの狭間で揺れるミャンマー人女性がいる。タイ・チェンマイ在住のサンシャインさん(仮名、31歳)だ。彼女は、軍政に抵抗する民主派政府傘下の軍事組織「国民防衛隊(PDF)」の衛生兵として戦ってきた過去をもつ。
戦場に3年以上
サンシャインさんの仕事は、前線から次々と運ばれてくる負傷兵の傷の手当てをすることだ。
彼女が衛生兵として送り込まれたのは、カレン民族同盟(KNU)が支配するミャンマー東部にあるPDFの拠点タウングー(バゴー管区)だった。期間は2021年5月~2024年7月の3年以上。ここは、首都ネピドーに比較的近く戦略上重要な地域で、ミャンマー国軍とPDFの激しい戦闘が続いていた。
サンシャインさんによれば、地上戦ではPDFが優勢だったという。ただ国軍は時折、空爆し、その都度状況は一変したという。国軍の激しい空爆は多くのPDF兵士を負傷させた。サンシャインさんが所属した部隊の衛生兵は彼女を含めてわずか2人。約100人の兵士を支えるにはあまりに少なかった。
「泣いたり叫んだりしたことはなかった。衛生兵である私が一番冷静に、目の前の生死に向き合わなければならなかった」(サンシャインさん)
腕の中で兵士が死にゆく
凄惨な戦場でいまなお忘れられない出来事がある。両足を失い、大量に出血した兵士の死を腕の中で見届けたことだ。
サンシャインさんは言う。
「助からないのはもう明白だった。私の腕の中で弱っていく。その兵士は『僕は大丈夫だから。ほかの人を見てあげて』と私に笑いながら言った」
救いたくても救えなかった。「兵士にとって私は意味がある存在だったのだろうか」とサンシャインさんは当時の胸の内を明かす。
軍事クーデターが起きる前のサンシャインさんは実は故郷のピイで会社員として働いていた。そのかたわらで、人権や社会問題について若者と語り合い、村の子どもたちに本を届ける活動にも取り組む活動的な女性だった。
ミャンマーでは2016年に文民政権が誕生した。自由に意見を言えるようになり、教育環境も変わっていく中で「ミャンマーはこれからもっと良くなる」と信じていた。
だからこそ2021年の軍事クーデターは、思い描いていた未来を奪う出来事だった。「落胆した。たくさんの夢があったのに。ミャンマーの状況すべてがこれから良くなると信じていた。夢は消え去った」(サンシャインさん)
サンシャインさんは軍事クーデターが起きてからも抵抗活動を続けた。だが仲間の若者が国軍に殺され、「ここではもう生きていけない」。2021年5月、友人と故郷を離れ、KNUの支配地へ入り、そこでPDFの一員として活動することになる。














