タイから母国を支援するミャンマー人、飲酒運転でバイク事故を起こすも賄賂5万円で帳消し

ジャックさん(仮名、41歳)。同じアパートには本国の税務調査から逃れた英国人、徴兵を拒んだロシア人、反共産主義の中国人が身を寄せる。国籍は違っても、ジャックさんを含め全員がマリファナ仲間だ。「自分がハッピーなら、ハッピーな友だちができる」(ジャックさん)

国軍が川をせき止め深刻な水不足

留学生の身分はあくまでタイに合法的に滞在するための手段に過ぎない。ジャックさんの本業は、軍政に抑圧された母国のミャンマー人たちを支えるNGOの活動だ。英国から主に寄付金を募り、深刻な情勢不安が続くミャンマー中央部のマグウェ管区とザガイン管区で支援活動を展開している。

少数民族の武装勢力が支配し、国際支援が比較的届きやすい国境沿いの地域に比べ、ミャンマー中央部は国軍の支配地域が多く、現地へ支援物資を直接運び込むことはほぼ不可能だ。そこでジャックさんらは寄付金を1村あたり5000万チャット(約380万円)に小口化し、支援を必要とする地域に配る。

資金の使い道は住民らが自ら決め、NGOは一切介入しない。国軍に壊された橋を修繕する村もあれば、蛇毒の抗血清などの医薬品を買う村、インターネットが寸断された中で村民同士の通信手段としてトランシーバーを購入する村もある。

ミャンマー中央部でとりわけ深刻な課題となっているのが、水だ。

マグウェやザガインはドライゾーンと呼ばれる乾燥地帯で、降水量がもともと少なく水資源が貴重な地域だ。「国軍は、民主化勢力の『国民防衛隊(PDF)』が支配する村々の上流で川をせき止め、住民の生活用水を遮断している」とジャックさんは批判する。

さらに、金の違法採掘による川の汚染も深刻だ。豊富な金を産出するミャンマー中央部では、内戦による混乱に乗じて違法な乱開発が横行。金の精錬に使う化学物質が川を汚染し、下流の水を使う住民が激しい下痢や皮膚疾患に悩まされるケースが相次ぐ。

そこで各村は支援金を活用し、井戸を掘って安全な水を確保したり、ソーラーパネル付きのポンプを導入して低地の水を生活用水としてくみ上げたりする。「限られた予算内で、何が必要かを住民自身で考えることが重要だ」

支援金の送金には、ミャンマーの最大手の銀行、カンボーザ銀行のモバイル決済アプリ「K-Pay」を利用する。軍政がミャンマー側の銀行口座を凍結することもあり、送金は簡単ではない。以前は年間7~10件のプロジェクトを実施できていたが、トランプ政権が米国国際開発庁(USAID)を解体したことで支援が止まり、活動予算が6割近く激減し、現在は英国からの寄付のみに頼っている。

ジャックさんのNGOの基本給は1カ月9000バーツ(約4万5000円)。プロジェクトが動く月は最大で2万バーツ(約10万円)を受け取ることもある。だが生活は決して楽ではない。エアコン代を節約し「暑さをしのぐため、事故の後に修理したバイクでチェンマイ近郊の山を走るのが趣味だ」(ジャックさん)。

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