タイから母国を支援するミャンマー人、飲酒運転でバイク事故を起こすも賄賂5万円で帳消し

ジャックさん(仮名、41歳)。同じアパートには本国の税務調査から逃れた英国人、徴兵を拒んだロシア人、反共産主義の中国人が身を寄せる。国籍は違っても、ジャックさんを含め全員がマリファナ仲間だ。「自分がハッピーなら、ハッピーな友だちができる」(ジャックさん)

月額1850円で徴兵免除

タイでの生活費とは別に、ジャックさんが毎月ミャンマーに送金し続けている固定費がある。それが、国軍から家族が身を守るための裏金だ。

ミャンマーでは2024年に、国軍による徴兵が始まった。男性は18歳から35歳まで、専門技能を持つ者は45歳までが対象となる。タイに移住する前、データビジュアライゼーション技士としてヤンゴンで働いていたジャックさんも例外ではない。そこで徴兵を逃れるため、住民登録のある行政区(ワード)の長に毎月2万5000チャット(約1850円)の裏金を払い続けている。

徴兵の選出方法には主に2つの方式がある。ランダムに選ぶ「くじ引き方式」と、行政区の長がリストから選ぶ「指名方式」だ。

兵役を回避するための裏金の払い方も方式ごとに異なる。

くじ引き方式の場合、当選してしまった人物がその都度、兵役回避のための裏金を支払う。金額は地域によって違う。ジャックさんの友人の歯科医はくじを引き当ててしまった際、100万チャット(約7万5000円)を払って兵役を免れた。指名方式では、ジャックさんのように毎月裏金を払い続けることで徴兵リストから名前を除外してもらう仕組みだ。

こうして兵役を拒む人々から集めた裏金の行き先は人身売買だ。徴兵制の導入以降、ミャンマーでは人身売買が横行。路上で拉致された若者が闇市場で1人あたり800万チャット(約60万円)で取引されている。その買い手となるのが、国軍から課された徴兵ノルマを達成できない行政区だ。

徴兵逃れのために裏金を払えば、別の誰かが拉致され、身代わりとして軍に送られる。そのシステムに加担することへの罪悪感について問うと、「自分にできるのは、国外から支援し続けることだけだ」とジャックさん。毎月裏金を払い続けているおかげで、ヤンゴンに残る妻にも危害は及ばないという。

「外国人や国際支援機関は国境付近の少数民族の地域に目を向けがち。だが本当に深刻なのは国軍が支配するミャンマー中央部だ」とジャックさん。徴兵や内戦で若い世代に空白が生じれば、その修復には長い時間がかかる。「ミャンマーが安定を取り戻すには少なくとも70年はかかるだろう」とジャックさんはため息をつく。

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