カンヌ広告賞をとった28歳の日系ブラジル人がいた!「日本は好き。でもブラジルに戻ったから今がある」

カンヌライオンズ2025(カンヌの広告賞)の授賞式に出席した日系ブラジル人3世のダニエリ・恵子・村本さん(フランス・カンヌで)。喜びで笑顔を爆発させる

ダニエリの文章はとても良いね

ダニエリさんが広告に興味をもったのは、サンパウロから車で1時間強の港湾都市サントスの公立高校に通っていたときだ。ポルトガル語の先生が「ダニエリの文章はとても良いね」と気に入り、広告の仕事をしたらいいのでは、と勧めてくれた。

高校を卒業し、サンパウロにキャンパスをもつ非営利の私立教育機関SENAC大学センターに進学した。ここで絵や写真はもちろん、コピーの作り方、ストーリーの考え方などを4年間みっちり学んだ。

SENACの学費は年間1万5600レアル(約48万円)。ブラジルには在学中は学費の2割のみを払い、就職してから8割を返すシステムがある。それを使って大学に通った。

とはいえサントスからサンパウロに引っ越したので家も借りるし、教科書も買わないといけない。働き、生活費を稼いだ。

ちなみに、「創造的な広告を作る国」として世界的に評価されるブラジルでは、広告・マーケティングに特化した専門大学ESPM(広告マーケティング高等学校)の知名度が抜群だ。また、広告・コミュニケーション学部が有名な名門マッケンジー大学もある。

ただESPMの学費は年間8万8000レアル(約271万円)、マッケンジー大学でも4万7800レアル(約147万円)とけた違いに高い。富裕層しか入れないという。

ダニエリさんはSENAC在学中、プジョーやシトロエンなどの広告を手がけるフランスの代理店BETC Havas(アバス)のサンパウロオフィスなどでインターンをした。経験を重ねるうちに、デザイナーやコピーライター、フォトグラファーではなく、「アートディレクターになりたい」と方向が定まった。

アートディレクターの仕事は簡単にいえば、アイデアをどうビジュアルに落とすかをディレクションすること。広告は基本的にコピーライターとアートディレクターの2人がペアを組んで仕事するが、コピーライターはアイデアを言葉で、アートディレクターはそれをビジュアルでどう表現するかを考える。

世界の名門代理店を渡り歩く

SENACを卒業したダニエリさんはとんとん拍子で広告業界を駆け上がっていく。

バーガーキングの広告で一躍名をとどろかせた米国マイアミ発祥のCrispin(クリスピン)でアシスタントアートディレクターを、世界最大級のOgilvy(オグルヴィ)とクリエイティブが強みのブラジルを代表するAfricaではそれぞれジュニアアートディレクターを務めた。

Greyに移り、アートディレクターとしてかかわったコロナビールの広告がカンヌライオンズ2025でゴールドライオンを受賞。「カンヌライオンズでの評価もあって、広告代理店からスカウトされるようになった」とダニエリさんは嬉しそうに話す。

ブラジルでは広告代理店のクリエイティブのスタッフのほとんどは白人男性だ。「でも日系人だからという差別は仕事で感じたことがない。良い仕事をすればいい。女性だから大きなプロジェクトを任せてもらえない、とは聞いたことがあるけれど、私はそんな経験もない」(ダニエリさん)

Greyの後は、ナイキの広告「Just Do It.」で一世を風靡した米オレゴン州に本社を置くWieden&Kennedy(ワイデン・アンド・ケネディ)のサンパウロオフィスを経て、この9月からは、カンヌライオンズの受賞回数がブラジルで最多の広告代理店AlmapBBDOで働く予定だ。

AlmapBBDOの主なクライアントは名だたる企業がずらり。ペプシコやフォルクスワーゲン、ブラジル企業では「100%ブラジル産」を掲げる化粧品ブランドのO Boticário(オ・ボチカリオ)など。オ・ボチカリオは2015年、バレンタインデー(ブラジルでは6月12日)に向けて、同性カップルを描いたCMキャンペーンを打った。これはブラジル国内で大きな社会的論争を巻き起こしたという。

ダニエリさんは「AlmapBBDOで働くことに今はワクワクと緊張がマックス。良い仕事をして、いつかは海外で英語を使って仕事をしたい。できれば欧州がいい」と夢を膨らます。

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