「持続的な水の確保・水質の改善」には年間180兆円の投資が必要、国連大学が報告書

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「ポスト2015年開発アジェンダ」(2015年に期限を迎えるミレニアム開発目標=MDGsの後継となる目標)で期待される“水関連の目標”を達成するには今後20年にわたって世界で年間8400億~1兆8000億ドル(84兆~180兆円)の投資が必要だ――。

これは、国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)と国連持続可能な開発事務所(UNOSD)が発表した報告書「持続可能な開発と成長のための触媒としての水」で明らかになったもの。水関連の目標とは、持続的な水資源の確保、水質・衛生の改善などを指す。

報告書は、水への投資額は莫大だが、経済・環境・社会的に大きな「便益」をもたらすと指摘している。その金額は年間3兆ドル(約300兆円)を超える可能性があり、投資額を優に上回る。

便益とは、保健医療部門を例に挙げると、公衆衛生と飲み水へのアクセス改善のための投資額1ドル(約100円)につき4ドル30セント(約430円)の利益を生む、と世界保健機関(WHO)は推定している。廃水処理や灌がい、環境サービスへの投資も有益だ。

水への投資は、大きな利益をもたらすことがわかっている半面、汚職の温情でもある。汚職の根絶を目指す国際的な非政府組織「トランスペアレンシー・インターナショナル」(TI)の調査では、水関連インフラへの投資額のおよそ3割は汚職で失われている、と推測する。

水の分野が汚職につながりやすい理由について、報告書の著者のひとりザファール・アディールUNU-INWEH所長は「水は部門横断的であり、管理は分散的。インフラは大規模な財政投資を必要とするうえに、民間企業や非公式な組織が関与することも汚職を助長する」と説明する。

アディール所長は「もし汚職を撤廃できれば、水関連目標の達成に必要な年間投資額は国内総生産(GDP)の1.2~2.2%に抑えることができるし(現在は0.73%)、保健医療費やその他の社会的費用の削減で数兆ドル(数百兆円)の利益が出るだろう」と述べる。

UNU-INWEHのコリーン・ シュースター・ウォレス研究員は「水や公衆衛生関連の投資額を現在の水準の2~3倍近くに増やさなければ、世界の成長と持続可能な開発で真の進歩を遂げることは極めて困難。他に選択肢はない。私たちは水への広範な投資をいますぐ始めなければならない」と強調する。

(堤環作)