【ドミニカ共和国de協力隊 (7)】塩素系漂白剤「クロロ」は万能? 金魚の水槽にも構わず投入

生活用品店にはたくさんの種類の洗剤が並ぶ生活用品店にはたくさんの種類の洗剤が並ぶ

途上国で生活すると、当たり前だが日本との習慣の違いを痛感する。ドミニカ共和国に青年海外協力隊員として赴任した当初(2013年8月)に大きな衝撃を受けたことのひとつに「洗剤の使い方」がある。今回はドミニカ共和国の洗剤事情を紹介したい。

■洗たく・モップがけ・レタス洗いまで

ドミニカ共和国では多くの途上国と同様、「水不足」や「安全な水の確保」が問題になっている。水が出ないのはしょっちゅうで、貯水用タンクの水の中のボーフラを見て目を疑うことも。そうした衛生環境もあってか、大活躍しているのが「クロロ」と呼ばれる塩素系の液状漂白剤だ。

クロロは、白い服を洗たくする時はもちろん、床のモップがけなど掃除にも使う。だから家はもちろん、レストランや商業施設に行っても、クロロの強烈なにおいが残っていることが多い。

だがクロロの用途はそれだけではない。ホームステイ先の家族と昼食の準備をしていた時、ステイ先の母親に「クロロを持ってきてちょうだい」と頼まれたことがある。何に使うのだろう、と私は不思議に思ったが、彼女はいきなり、サラダ用のレタスを洗っていた水の中にスプーン1杯のクロロを投入。「殺菌するためよ」とレタスを揉みながら言った彼女の姿を忘れられない。

クロロは実際、ドミニカ共和国では殺菌用としても広く普及している。“殺菌されていない”飲料水や生野菜などに入れるよう、政府も指導しているようだ。だが体に影響はないのだろうか。というのも、クロロは毒々しいきついにおいを放つからだ。

私が一番衝撃を受けたのは、ホームステイ先の家族が金魚を飼い始めた時のこと、ステイ先の母親が、水槽の中の水を殺菌しようと水槽にクロロを投入したことだ。金魚はその翌日、死んでしまった。この“事件”は、ドミニカ共和国ではなんにでもクロロを使うということはもちろん、クロロの強烈なパワーを身をもって教えてくれた。

■洗剤でぬるぬるした食器も問題なし!?

この国ではまた、用途を区別せずに洗剤を使う傾向がある。洗たくにシャンプーを、食器用洗剤に洗たく用粉洗剤を用いるのはざらだ。さらにすすぎの水は、節水のために同じ水を繰り返し使うから泡だらけ。食器に泡が残ってぬるぬるしていてもお構いなし。そのまま自然乾燥させる。洗剤を体内に入れる危険より、「洗剤で洗って、殺菌をしたからもう安全」との考えが強いようだ。

「安全な水」に困らない日本から来た私は、初めこそ、ぬるぬるの食器に神経質だった。ところがいまはすっかり慣れてしまった。クロロ付きの食器にご飯や豆の煮込みが盛られていても抵抗なく食べられる。

だがひとつだけまだダメなものがある。それは、クロロの漂白剤で洗ったサラダだ。金魚事件を思い出し、やはり健康に良くないのではと想像してしまって、なかなか口にできない。ドミニカ共和国で暮らすのはあと1年2カ月(青年海外協力隊の任期は2年)、私は自分がどこまでドミニカサーダ(ドミニカ人化)されるのか楽しみでもあり、不安でもある。(種中 恵)