車が急増する西アフリカ・ベナン、日本車を得意とする修理工の顧客はこの1年で2倍に!

ベナンのアボメカラメ市にある修理工場で働くティグリ・オヨナさんベナンのアボメカラメ市にある修理工場で働くティグリ・オヨナさん

中古の日本車をもつ人がここ数年増え続ける西アフリカのベナンで、日本車に強い車の修理屋「ワークファースト」のオーナーがティグリ・オヨナさん(25歳)だ。「ベナンでは日本車の修理工の数が足りない。だから顧客の数は1年で2倍に増えたよ」と微笑む。

■17歳で単身ガーナへ

オヨナさんが日本車の修理工を志したのには、あるきっかけがあった。彼が子どものころ、母がトヨタ・カローラをもっていて学校の送迎などにその車を使っていた。「快適さに驚いた」(オヨナさん)。ある日、母がバイクで外出した隙をついて車を勝手に運転し、壁に激突させてしまう。日本車の修理工がきて修理をしてくれたのだが、オヨナさんはその姿を見て「僕も日本車の修理工になりたい」と思ったという。

オヨナさんは17歳のとき、日本車の修理技術を学ぶため、隣国のガーナへ単身で飛んだ。首都アクラの修理屋で仕事をしながら技術を学ぶためだ。「当時のベナンではまだ日本車の修理ができる人はまれだった」とオヨナさんは振り返る。アクラの修理屋で4年働いたのち、ガーナ・ベナン両政府が発行する自動車の修理屋を開業するのに必要な「特別許可証」を取得した。

2016年にベナンのアボメカラビ市で車の修理屋ワークファーストを立ち上げた。日本車のほか、韓国やドイツの車も直す。

オープンして3年目。ワークファーストの2018年の顧客の数は2017年と比べて約2倍に増えている。その最大の要因は、ベナンでのここ数年の日本車人気。オヨナさんは「ベナンで走る車の6割が日本車だと思う。ただ日本車を修理できる人は修理工全体の3割ほどしかいない。今のベナンでは日本車の修理工の数が足りていない」と説明する。

会社の経営が順調であることもあって、オヨナさんは多忙だ。基本の勤務時間は朝の8時から夜の8時まで。休みは週に1日。1日に5台修理する日もある。月収は約12万5000CFAフラン(約2万5000円)と、ベナンの1人当たり国民総所得(GNI)820ドル(1カ月に換算すると68.3ドル=約7800円)の3倍以上を稼ぐ。

■西アフリカ全土で!

オヨナさんの夢は、修理工場を賃貸ではなく、自分の土地と建物にすること。「そのためには1000万CFAフラン(約200万円)必要。自動車修理屋にはガレージなど特殊な設備が必要だからこれだけかかってしまう。今の稼ぎでは足りない」と悩む。

欧州や日本で修理工の仕事ができれば、今の5倍の給料はもらえる。ただそのためにはもっと高い技術が必要だという。オヨナさんは現在、月に10日ほど午前中の仕事を休みにして、物理を学ぶために大学に通う。また来年にはもう1度、ガーナで1カ月働き、スキルを上げる予定だ。

「西アフリカではこれから車の数、特に日本車の数が増えていくと思う。そのときにみんなが安全に車に乗れるようサポートしていきたい。西アフリカ各国に1店舗ずつに店をもつことができたら最高」。オヨナさんは将来の計画について笑顔でこう語った。