カンヌライオンズ2025(カンヌの広告賞)の授賞式に出席した日系ブラジル人3世のダニエリ・恵子・村本さん(フランス・カンヌで)。喜びで笑顔を爆発させるブラジル・サンパウロ在住の日系ブラジル人3世で世界に大きく羽ばたきつつある28歳の女性がいる。広告アートディレクターのダニエリ・恵子・村本さんだ。母(2世)の出稼ぎに付いていくかたちで7~14歳を三重県津市で過ごしたダニエリさんは「カンヌライオンズ(カンヌの広告賞)を受賞できたのは、ブラジルに帰国し、チャンスをつかめたから」と話す。
広告で太陽保護区を作る!?
ダニエリさんの仕事は大手広告代理店に勤めるアートディレクターだ。コロナビールやボルボ、ウーバーなど、名だたるグローバル企業の広告をこれまで手がけてきた。
代表作は、メキシコのコロナビールが創業100周年(2025年)を記念し、社会課題と結びつけた広告キャンペーン「サン・リザーブ(太陽保護区)」。コンセプトはこうだ。

ダニエリさんがアートディレクターを務めた「太陽保護区」の広告。ビーチが日陰になる問題が一目で伝わる。ダニエリ・恵子・村本さんのホームページから引用
世界各地でいま、高層ビルやリゾート施設がビーチ沿いに建設されている。ビーチが日陰になってしまう問題に目を付けたコロナビールは、森林保護区や海洋保護区といった既存の枠組みになぞらえて、“太陽保護区”という新しい概念を作り出した。いわば、「日照」を守るための保護区だ。
この広告の斬新さは、単なるストーリーだけではない。ブラジルの不動産法を駆使してビーチ沿いの「上空」を購入。これにより高層ビルなど、日照を遮る建物を物理的に建てられないようにし、砂浜に太陽の光が届き続けることを法的に保証した。
このアイデアをひねり出したのは、米ニューヨークで誕生した老舗の広告代理店Grey(グレイ)サンパウロオフィスに当時在籍していたダニエリさんとコピーライターだ。
「今まで誰もやったことのないアイデアだから難しかった。不動産の法律を調べ、弁護士に相談もして、難題をクリアしていった」。通常の広告キャンペーンでここまでやることはないという。
広告の反響は凄まじかった。「たくさんのメディアが『世界初の太陽保護区』と取り上げてくれ、一般の人にも広がった。太陽保護区が世界中にできて、ビーチの自然や生き物が守られればと思う」
サーファーでもあるダニエリさんはこう語る。
アイデアが「言葉」で終わらずに「実体」を伴ったことが高く評価され、コロナビールの広告キャンペーンはカンヌの広告賞「カンヌライオンズ2025」でゴールドライオン1個、シルバーライオン1個を獲得した。
カンヌライオンズ2025の受賞式でステージに立ったダニエリさんはそのときの心境を「努力した一秒一秒に意味があった。言葉では表せないほど感動した」と振り返る。

カンヌライオンズ2025でゴールドライオンを受賞したチーム。アートディレクターを務めたダニエリさんは後列右から3人目














