カンボジアの伝統的着火剤「ジャロ」はいつまで使われる? シェムリアップの女性47人に聞いてみた

0316髙橋くんPジャロシェムリアップの市場で売られる「ジャロ」。1本の値段は1500~3000リエル(40~80円)。数センチメートル単位に細かく切って使う。毎日使って2~3カ月もつ

「ジャロ」という伝統的な着火剤がカンボジアにある。シェムリアップ在住のカンボジア人女性47人を対象に「(炭で料理するための)石釜を使用する際、ジャロとビニール袋(またはタイヤ)のどちらを着火剤として使うか」とアンケート調査したところ、6割超の29人がジャロと答えた。7%前後の高い経済成長率を続けるにもかかわらず、カンボジアには今のところまだ“伝統”は残っているようだ。

ジャロとは一見するとただの棒。甘いかおりがするのが特徴だ。長さは60センチメートル、太さは直径5センチメートルぐらい。ジャロは、数センチメートル単位で切り落とし、それを着火剤として使う。市場に行けば1本1500~3000リエル(40~80円)と“庶民的な値段”で売られている。

アンケートは、シェムリアップの中心部に近い地元の人が通う市場(デイホイマーケット)で22人、郊外の村(ボン村、ベル村、トレック村、アラン村)で25人に実施した。結果は意外にも、中心部では17対5でジャロを使う人が多かった。対照的に郊外では12対13でビニール袋がジャロをわずかに上回った。全体ではジャロ派29人、ビニール派18人。

ジャロ派の意見で最も多かったのは、ビニール袋を使うと変な「におい」がするからジャロを着火剤にするというもの。ラジオのMCを職業とするソリダーさん(56)は「ビニール袋を着火剤に使って焼いた野菜や魚を食べるとプラスチックのにおいがする。だからビニール袋を使うのをやめた」と話す。市場でフルーツを売るトロップさん(38)も「私は心臓病を患っている。(健康に悪いから)ビニール袋を使おうとは思わない」。ジャロは自然のものなので、悪臭はまったくしない。

これに対してビニール派がこぞって強調するのは「利便性」だ。ビニール袋は買い物するとついてくるため、簡単に手に入る。主婦のトゥランさん(45)は「ジャロがあったらジャロを使う。けれど、なかったらビニール袋かタイヤ。わざわざジャロを市場まで買いに行くことはしない」と言う。料理に石釜を使う頻度が月に2、3度と少なければビニール袋で済ませるという傾向が浮き彫りになった。

「コスト」の面からビニール袋やタイヤを選ぶ人もいる。魚屋のマブさん(36)は、兄が営むバイク修理店から壊れたタイヤをただでもらえるため、それを着火剤に使う。また八百屋のチョン・ソンさん(35)は「ふだんはビニール袋。でももし値段が同じだったら、においやよく燃えるという理由でジャロを使う」と話した。

経済発展とともにカンボジア人の生活が近代化していくのは必至。10年後、20年後もジャロが残っているかどうかに注目だ。というより、着火剤を必要とする石釜でカンボジア人はいつまで料理をするのだろうか。

ジャロはすぐに火が付き、よく燃える。ジャロを持って外国人が街を歩くと、「どんなふうに燃えるのか見せてやるよ」とカンボジア人からよく声をかけられる。都市部ではガスが普及し、石釜を使ってない家庭もあるが、カンボジアの人のほとんどがジャロを知っている

ジャロはすぐに火が付き、よく燃える。ジャロを持って外国人が街を歩くと、「どんなふうに燃えるのか見せてやるよ」とカンボジア人からよく声をかけられる。都市部ではガスが普及し、石釜を使ってない家庭もあるが、カンボジアの人のほとんどがジャロを知っている