ヤンゴンの大学生はアウンサンスーチー氏が大好き! 人気の秘訣は「ミャンマー愛」

取材に応じるヤンゴン工科大学の学生たち取材に応じるヤンゴン工科大学の学生たち

ミャンマー最難関のヤンゴン工科大学。20人の学生に「アウンサンスーチー氏は好き?」と尋ねると、全員が「もちろん!」と声をそろえた。

■「信じてついていく」

どうしてそんなにアウンサンスーチー氏が好きなのか。理由を尋ねてみた。一番多かった答えは「ミャンマーへの愛」。

「アウンサンスーチー氏は自らの生活、家族を犠牲にしてまで、ミャンマーや僕たちミャンマー人のために民主化運動を行っていた。だから僕たちも彼女を信じてついていく」。特に目を輝かせてこう話すのは、石油工学を学ぶ2年生のタジンマくん。18歳。彼のフェイスブックのカバー写真はアウンサンスーチー氏だ。

「(アウンサンスーチー氏は)アウンサン将軍の娘だから」と答える人もいた。ビルマ建国の父として尊敬されるアウンサン将軍。2015年2月13日にはアウンサン将軍の生誕100周年を祝う式典が全国規模で行われた。またヤンゴン市内の大きな通りの名前になるなど、アウンサン将軍の栄光はミャンマー人の心に根付いている。

■期待するのは「教育の発展」

アウンサンスーチー氏に何を期待するのかを聞いてみた。一番多かった答えが「教育の発展」だ。大学をはじめとする教育の質の向上や、すべての人が教育を受けられるようになることを指す。ミャンマーでは国民の37%は小学校卒だ。「(アウンサンスーチー氏には)教育を十分に受けていない子どもたちやストリートチルドレンに教育の機会を与えてほしい」(2年生男子)。

2番目に多かったのが「国家の発展」。アウンサンスーチー氏による民主化運動・政治活動によって、言論・表現・思想の自由がミャンマーに訪れることを望んでいる。交通機関の発展を求める声もあった。「ヤンゴンは車が多すぎる。交通インフラを整備してくれないといつも渋滞で困る」と、日々の生活の改善を求める人もいる。

一方で、民主化に伴って、民主主義を誤解する人が出てくることを心配する向きもある。「民主主義=何でもしていい、と思う人が出ないためにも教育の推進が必要」(2年生女子)。2011年の民主化前と比べて、ヤンゴンの治安が悪くなったと感じる人はいなかったが、数年後民主化が定着したとき、いかに治安を保つかもアウンサンスーチー氏にとって潜在的な課題のひとつといえそうだ。

■未経験でも気にしない!

ミャンマー国内でも、政治経験を持たないアウンサンスーチー氏に国を任せられるか、という議論は行われている。だが20人中すべての学生が、アウンサンスーチー氏の政治経験のなさを気にしていない。学生たちの間では、自らを犠牲にした人生や教養、能力から、彼女に対する期待が高まる一方だ。「軍事政権よりも良くなることは確か。アウンサンスーチー氏を信じて、チャンスをあげるべきだ」(2年生女子)

また2015年11月に行われた選挙で圧勝した国民民主連盟(NLD)は、政府の主要ポストに他党からも起用するため、経験豊富な議員がNLD党首であるアウンサンスーチー氏を支えるとの見方もある。「どんな問題もアウンサンスーチー氏がきっと解決してくれる」(2年生男子)。アウンサンスーチー氏への厚い信頼は現時点では揺らがない。

軍事政権下ですべての意見や思想が制限されてきたミャンマー。アウンサンスーチー氏がミャンマー人を束縛から解放してくれる――そんな期待が学生の表情に現れていた。「ミャンマーにも明るい未来がくると信じている」(タジンマくん)