ウクライナ侵攻を非難する人道決議に反対・棄権した国は「本当にロシアの味方」なの? 市民のホンネを聞いてみた

ラオスの首都ビエンチャンの穏やかな街中。バイク社会のラオスでは、市民の関心は国外の戦争よりも毎日のガソリン代に向くラオスの首都ビエンチャンの穏やかな街中。バイク社会のラオスでは、市民の関心は国外の戦争よりも毎日のガソリン代に向く

ボリビア「戦争に正当な理由はない」

南米のボリビアも、人道決議を棄権した国のひとつだ。だがボリビア政府の判断にボリビア人の多くは異を唱えている。

ボリビアの化学会社勤務の50代の男性によると、ボリビア人の大多数はどんな戦争にも反対する国民性だという。ボリビアは歴史的に、ブラジルやチリ、パラグアイなどの周辺国との戦争で多くの人命と領土、海を失ってきた。

ボリビア政府が棄権した理由についてこの男性は「ボリビア政府は親ロシア。だが私は、他国への軍事介入は非難すべきだと思う」と語る。

人道決議には棄権票を投じた一方でボリビア政府は、ウクライナ難民を受け入れた。ボリビア東部の街サンタクルスの空港に到着したウクライナ難民の夫婦をボリビア政府は歓迎したという。

前述のボリビア人男性は「ウクライナ難民の受け入れは、(戦争への反対が根強い)ボリビア市民の反発を防ぐためだ。ロシアとウクライナの関係にボリビア政府は中立だという姿勢を示す狙いではないか」と冷静に指摘する。

ラオス「政治的な意見は危険」

ラオスも同様に、国連の人道決議に棄権した。だがラオス市民が政府の決定に賛成か反対か、政治的な意見をもつことは少ないという。

国際NGOに勤務する30代のラオス人男性は「ラオス人が最も気にかけているのは、ウクライナ侵攻のしわ寄せによるラオス国内のガソリン価格の上昇。友人とは自分たちの生活に関係する話をするだけだ」と述べる。

ラオスでは、政府によるフェイスブックなどのソーシャルメディアの情報統制が厳しい。そのため政治的な話をすることは危険で、国民は避ける傾向があるという。

首都ビエンチャンに住む国際協力NGOのスタッフの30代の日本人女性は「(ウクライナ危機へのスタンスについて)ラオス国内に強い世論がないのは、海外メディアの情報が日常的に耳に入らないことも理由では」と推測する。ラオスの地元紙は連日、和平交渉の進展具合や中国政府の見解は報道するが、ウクライナの被害状況を取り上げることは少ない。

ラオス政府が人道決議に棄権した理由についてこの日本人女性は「ラオス政府が気にしているのは、ロシアや中国といった、ラオスにとって重要な国々との関係なのではないか」と話す。

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