デモ先導で指名手配されたミャンマー人監督、潜伏生活を自撮りした映画が4月27日から全国公開

戦闘服に身を包む、映画「夜明けへの道」のコパウ監督。ミャンマーで築き上げた地位を捨てて最後まで戦い抜く覚悟だ戦闘服に身を包む、映画「夜明けへの道」のコパウ監督。ミャンマーで築き上げた地位を捨てて最後まで戦い抜く覚悟だ

国民を殺すのが楽しいですか

ヤンゴン市内の隠れ家で4カ月ほど過ごした後、国軍の支配に抵抗する民主派や少数民族の武装勢力が支配する地域に移ったコパウ氏。タイに近いこの地域で現在も暮らす。民主派勢力が樹立した国民統一政府(NUG)傘下の国民防衛隊(PDF)に参加した若者の食事を作ったり、国内避難民に水や食料を届けたりしているという。

コパウ氏は「今年2月に国軍が徴兵制を導入すると発表した後は、民主派の支配地域に逃れてくる若者が増えた」と明かす。

映画の後半はこの地域での日常と、コパウ氏が自身の思いを独白する映像がメインだ。PDFメンバーの訓練のようすはもちろん、日々の食事、洗濯など何気ないシーンもある。若者が食べ物を前に笑顔を見せたり、6人で輪になってボールを落とさないように蹴り上げるミャンマーの伝統球技「チンロン」を楽しんだりする姿も見える。

その一方で、もう一つのミャンマーの現実も映し出す。多くの市民が国軍の攻撃の犠牲になっているのだ。ミャンマー北部のザガイン管区の自宅を焼き討ちにされた女性は「(国軍兵士に対し)命令を受けて国民を殺し、財産を奪うのが楽しいですか」と涙ながらに訴える。

ヤンゴンに残る、コパウ氏の妻は自宅の外から銃撃を受けた。自身の日常をSNSに配信していた最中に突然、数発の銃撃音が響く。「ここにいるのは女性と子どもだけ。どうして殺そうとするのですか」と涙をこらえ、現状を伝えるために配信を続けた。

未来のために戦い続ける

クーデターから3年以上が経ち、コパウ氏のように抗議を続ける芸能人はほぼいなくなった。国軍への抵抗を諦め、普通の生活に戻った人も少なくない。だがコパウ氏は「沈黙していては(国軍の不当な支配という)問題の解決にならない。民主化を(再び)達成するため、国内で知名度のある自分には声をあげる使命がある」と強調する。

国際社会での関心も薄れつつある。「国際社会は『経済制裁をする』という紙切れ一枚の宣言しか出さない」とコパウ氏。日本人に向けては「映画を見てミャンマーの現状を知ってほしい。民主化の活動を支えるため、日本政府に対して声をあげてほしい」と訴える。

「(軍政を倒すという)革命の犠牲は大きい。それでも一歩も引かない覚悟ができている。ミャンマーの子どもたちには未来のある国で暮らしてほしいから」(コパウ氏)

映画は101分。4月27日より、K’s cinema(新宿)ほか全国で順次公開される。

クーデターで実権を握った国軍への抵抗を表す「3本指」を掲げる市民ら(映画「夜明けへの道」から)

クーデターで実権を握った国軍への抵抗を表す「3本指」を掲げる市民ら(映画「夜明けへの道」から)

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