外国人メイドの「強かん」が後を絶たないカタール、アムネスティが批判

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アムネスティ・インターナショナルは4月23日、「睡眠だけが休息:カタールの家事労働者が受ける搾取」と題する報告書を発表した。このなかで、カタールで働く外国人家事労働者(メイド)が性的暴力などを雇用主から受けているにもかかわらず、カタール当局が野放ししている実態を明らかにした。

報告書によると、カタールの外国人家事労働者らは、雇用主による暴力や外出禁止、給料の未払い、1日の休みもない週100時間労働などに直面するケースが少なくない。暴力とは、叩かれたり、髪を引っ張られたり、目を突かれるほか、蹴られて階段から落ちたり、熱したアイロンを押し付けられるなどがある。強かんされることもある。

アムネスティがヒアリングしたフィリピン人女性の家事労働者は、雇用主から強かんされそうになって逃げたところ、窓から落下。地面に倒れて動けなくなった(両足骨折、脊椎損傷)。ところが雇用主は救急車を呼ぶ前に、その女性に性的暴行を加えたという。女性は告訴したものの、「証拠不十分」として却下された。

カタールの法律は、家事労働者の労働時間に制限を設けていない。休日の規定もない。家事労働者が雇用主から逃げ出せば、「逃亡者」の烙印を押されてしまう。たいていは身柄を拘束され、母国へ強制送還されるのがオチだ。

理不尽なのは、性的虐待を受けた女性が、婚外交渉をしたとして「不貞罪」に問われることすらあることだ。有罪なら1年の拘禁と強制送還が科される。アムネスティによれば、ドーハの強制送還センターに収容されている家事労働者のなかには、妊娠した女性や、乳児13人とその母親(2013年3月時点)もいるという。

多くの出稼ぎ労働者を受け入れるカタール。同国には8万4000人以上の外国人女性家事労働者がいるといわれる。その大半が南アジアと東南アジアの出身。ドーハの強制送還センターに収容される女性の95%は家事労働者だ。

家事労働者に対する人権侵害を懸念するアムネスティはかねて、労働の権利を否定する法規を廃止するようカタール当局に要請してきた。これに対してカタール政府は、家事労働者法を制定すると繰り返し公言するものの、いまのところ何の動きもない。

カタールは、2022年のサッカーワールドカップ開催国。インフラ建設で外国人建設労働者の窮状が注目される一方で、女性の家事労働者が受けるひどい虐待は陰に隠れてしまっている。(堤環作)