インドのホメオパシーで末期がんがほぼ完治、かかったお金はわずか5000円!

サーカール医師の診療所。玄関前には救急車が停まり、中にはお年寄りが横たわっていた(インド・コルカタ)サーカール医師の診療所。玄関前には救急車が停まり、中にはお年寄りが横たわっていた(インド・コルカタ)

インドでは伝統的な療法「ホメオパシー」が貧困層から富裕層まで広く信頼を得ている。コルカタ在住のアンジャム・ムッカルジーさん(48歳)は末期がんを患ったが、ホメオパシーの治療を始めてわずか4カ月でほぼ完治した。「自分が治療を受けるまで、ホメオパシーの効果はぜんぜん信じていなかったのに」と喜ぶ。

コルカタの中心部から車で30分の住宅街に、ホメオパシーを専門とするスニルマル・サーカール医師の診療所がある。平日の午後3時、玄関に入りきらない靴やサンダルがドアの外まで無造作に置かれていた。ここにムッカルジーさんは、兄の運転する車で2時間かけて通う。

ムッカルジーさんはおよそ1年前に、肺がんが周囲の臓器に転移しステージ4と診断された。最初は大きな病院で化学療法を受けた。副作用で髪はすっかり抜け落ちた。だが病巣は一向に小さくならなかったという。

ホメオパシーの治療を始めたきっかけは、同じステージ4の肺がんをサーカール医師の治療で治したという知人の勧めだった。「それまではホメオパシーをぜんぜん信じていなかった。わらにもすがる思いでこの診療所の扉をたたいた」と当時の心境を振り返る。

ホメオパシーとは、患者を苦しめる症状と似た症状を引き起こす「物質」を高度に希釈浸透したものを薬として内服し、自己治癒力を高める治療法だ。レメディーと呼ばれるホメオパシーの薬の成分には、薬草や鉱物だけでなく、臓器や細菌・ウィルスなどもある。「自然由来の薬を使うため、副作用がないとされるホメオパシーはインドで人気が高い」(コルカタにあるガンジー・セバ・サンガ医院医師)

ホメオパシーに治療法を切り替える前に撮った画像には、肺から下に広がった病巣が色濃く写っていた。それが現在ではかげがきれいに消え、わずかに肝臓に黒点のように残るのみ。「自分でも本当に驚いたよ。家族もみんな喜んでいる」

治療費は格安だ。「ここのドクターは初診の際に3000ルピー(約4500円)と、あとは1カ月半に1回の診察で薬代200ルピー(約300円)を払うだけ。治療費が安いのは本当にありがたい」。ムガジーさんは多くのインド人と同様、医療保険には入っていない。

ホメオパシーは、日本など多くの先進国では「プラセボ(偽薬)程度の効果」という評価が一般的だ。このため保険の適用外になっていることが多い。ところがインドは保険が適用されることがあるだけでなく、ホメオパシー医師は国家資格になっている。

ちなみにインドの医療保険は、かつては加入者の割合が人口の1割未満だった。だが2008年に貧困層を対象にした保険制度(RSBY)が誕生。2019年からは対象を拡大した国家健康保護計画(NHPS、通称モディケア)が始まった。これにより加入率は25%に向上するといわれる。

インドでホメオパシーは、高額な西洋医学よりも、保険料を払えない貧困層に加え、モディケアがカバーしない中間層・富裕層まで広く信頼されている。

ただ異なる意見もある。日本語を学ぶインド人学生に聞くとアンチホメオパシーだった。「1つの症例の話だけでは証拠が十分とは言えない。僕はやっぱりプラセボだと思う」と話す。

満員のホメオパシーの診療所の待合室。長椅子に倒れこんでいる人も

満員のホメオパシーの診療所の待合室。長椅子に倒れこんでいる人も

診察中のサーカール医師(左)とムッガルジーさん。机上には画像検査結果のコピーが見える

診察中のサーカール医師(左)とムッガルジーさん。机上には画像検査結果のコピーが見える