カンボジアの教育レベルを上げるカギは教師の読解力! 「読書WS」を教員養成大で必修にした中村健司さん

カンボジアの教員養成校の卒業生を対象にした大規模な読書ワークショップでファシリテーターを務める中村健司さん(中央)。2019年11月、カンボジア東部のモンドルキリ州で撮影カンボジアの教員養成校の卒業生を対象にした大規模な読書ワークショップでファシリテーターを務める中村健司さん(中央)。2019年11月、カンボジア東部のモンドルキリ州で撮影

最低限の読解力がある生徒は8%

中村さんが「読書の演習科目」に着目した理由は、カンボジア人の読解力の低さだ。経済協力開発機構(OECD)が15歳の生徒を対象に実施する国際学力調査(PISA。カンボジアはOECD未加盟国が対象の「PISA for Development =PISA-D」に参加)の2018年のデータによると、最低限の読解力「レベル2(記事や統計表を読んで重要な情報を発見できる)」に達した生徒はたった8%だった。

ちなみにカンボジアと同じくPISA-Dで読解力レベル2以下の生徒が70~95%を占める国は上から、グアテマラ、ホンジュラス(ともに中米)、セネガル、ザンビア(ともにアフリカ)。カンボジアを下回るザンビアだと、レベル2に達した生徒の割合は5%だ。

カンボジア人の読解力が低い理由のひとつとされるのが、1970年代後半に起きたポル・ポト政権による大虐殺だ。主なターゲットとなったのは教師を含む知識人たち。1975年当時の人口の4分の1が犠牲になったといわれる。

大虐殺の後も1991年まで内戦が続いた。その結果、教育は崩壊。中村さんによると、小学校教師が不足していた1994年に教師になったのは、わずか4~8年の学校教育(小4~中2のレベル)と4~5カ月の研修を受けただけの人材だった。

負の歴史から中村さんは自身の活動への思いをこう明かす。

「自分が死ぬまでに、教員養成大学の教官や学生の読解力・理解力が目に見えて上がるという成果は見られないかもしれない。長期的な取り組みだ。でもこれはカンボジアの教育の土台になる」

中村さんの次なる目標は、カンボジア全土にある22の教員養成校(2年制)にこの取り組みを水平展開すること。加えて教員養成大学には「読書部」を立ち上げ、「読書の演習科目」を終えた1年生が2年生以降、「読書の演習科目」のファシリテーターになったり、さまざまな読書法をもとにチームで本を読んだりする場をつくりたいという。

読書ワークショップをする授業「読書の演習科目」を受ける教員養成大学の学生たち。中村さんによると、カンボジア人は話好きであるためか、チーム型アクティブラーニングの授業は盛り上がるという

読書ワークショップをする授業「読書の演習科目」を受ける教員養成大学の学生たち。中村さんによると、カンボジア人は話好きであるためか、チーム型アクティブラーニングの授業は盛り上がるという

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