「学校では学べないフランス植民地時代の闇を映画で伝えたい」、ベナン人映画監督メナマン・ボコボさんの挑戦

ボコボさんベナン・コトヌー市内のカフェで、映画監督としての思いを語るメナマン・ボコボさん(左)

「ベナンはまだ完全にはフランスから独立していない。学校では教わらない植民地時代の事実を、映画を通して伝えたい」。こうした信念を胸に、映画を作り続ける監督がいる。ベナンのカラビ出身のメナマン・ボコボさん(27)だ。「アフリカの政治指導者の闇」をテーマにこれまで約10本の映画を製作してきた。ベナンにはいまだに、旧宗主国フランスの立場から見た植民地支配の“正の歴史”しか教えない学校がある。ならば映画で“負の歴史”を伝えようというのが狙いだ。

ボコボさんの代表作は「Jusqua quand?(シュースカ・カン?)」(英語タイトル:From Now to When)。フランスによるアフリカ支配の知られざる側面を描くフィクション映画だ。ストーリーはこうだ。フランス政府の無謀な命令の数々に嫌気がさした某国(アフリカにある架空の国)の大統領が、新たに1人の兵士を大統領に擁立し、フランスからの独立を図ろうとする。しかしこの動きを察知したフランス政府は、他のアフリカ兵士を使って大統領となった兵士を暗殺する。

ボコボさんは「アフリカの良い指導者が、国にとって利益になる政策を実行しようとしても、フランス政府に『暗殺』という形で阻止されてしまう。これと似たような事態が現在のアフリカで実際に起きている」と訴える。この映画は、ベナンだけではなく、コートジボワールやブルキナファソなど他のアフリカ諸国にも広く配給された。

フランスの影響を強く受けるベナンの教育現場では、フランス寄りの偏った見方で、植民地時代の歴史を学ぶ。ベナンの国立大学アボメカラビ大学の学生ジロクライン・ロドリゲスさん(21)は「学校では、フランスがベナンを植民地にしていた事実と、フランスがベナンに独立を『与えた』ということしか学ばない。植民地支配の詳細は教わらなかった」と打ち明ける。

ベナンは1960年8月1日に、フランスから独立した。しかしボコボさんは「ベナンはいまだにフランスから完全に独立できていない」と話す。その例のひとつが、西アフリカの共通通貨CFA(セーファーフラン)だ。CFAは固定相場制で、レートを決めるのはフランス政府。また1977年には、ベナンのマチュー・ケレク前大統領が進めた銀行や石油産業の国有化政策に反発したフランスが、ベナンに非公式の軍隊を派遣する、という事態も起きた。

ベナンの学校教育現場で、植民地支配の歴史が一部しか教えられていないことを不満に思うボコボさん。次回の作品では、列強諸国によるアフリカ支配を「援助」の側面から描くという。「アフリカで行われている援助の数々は、現地に住む人たちに支援なしでは生活していけないという観念を植え付けている。だがアフリカにはすで自分たちで発展できる素養があることを伝えたい」と語る。